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第4話 ナイトメア・トラップ・12

 マカロがピンクの髪を掻き毟り、苦虫を嚙み潰したような顔で舌打ちする。 「俺がもらったプレゼントを横取りしたり、俺が好きになった子を寝取ったりさぁ。その癖に親父の前ではいいカッコばっかりして、親父もサバラばっかり褒めてたし……」  どんな意地悪をされていたのかと聞けば、実にくだらないことばかりで肩の力が抜けてしまった。マカロは俺の反応を見て頬を膨らませている。 「幼馴染みで同じように育てられたのに、片方だけ要領よくて贔屓されるっていうキツさが分かるか!」 「……分からないでもないけど、マカは王子なんだろ。職権乱用で、やられたらやり返せばいいじゃん」 「それが出来たら苦労しないってば!」  するといつの間にそこにいたのか、洗面所の外で壁にもたれていたサバラがくすくすと笑った。ワイシャツだけを身に着けた寝起きの美青年。伸びた生足がいちいちエロい。 「マカロ、こっちの世界でも相変わらず落ちこぼれだな。せっかく俺が鍛えてやっていたのに」 「何だよ、鍛えるって! 一応炎樽を守るのと種を集めるって任務があるから、今は一時休戦してるけど、……俺のチョコちゃん寝取った恨みは一生忘れねえからな!」 「なるほど、あの青年はチョコちゃんという名前だったのか。道理でチョコレートのように甘い種を持ってると思った」 「んああぁ! 悔しいいぃ!」  泣きついてきたマカロの頭を撫でながら、俺はサバラの性格の悪さに思わず顔を引き攣らせた。――いるいる、こういう嫌な奴。 「天和に言いつけてやる!」 「なっ……、やめろ! それだけはマジでやめろ!」  そうして彼らの食物連鎖の頂点に立っているのは、何故か知らないけど天和らしい。  確かに天和は鬼っぽいし怒らせたら怖いけど、「ただの人間に怯える夢魔」というのは――何だか途端にショボい存在に思えてくる。 「……どうでもいいから、仲良くやれよ。マカロ一人だって喧しいのに。ていうかサバラは一応大人って設定なんだから、ちゃんと自分で部屋借りて暮らせよ。学校から給料も出るんだろ」 「そんな冷たいことを言わないで欲しいな、炎樽くん」 「だってお前がこの家にいる限り、自動的に天和もここにいることになるんだぞ。お前にだって都合が悪いだろ」  ぐぬぬそうだったか、と整った顔を曇らせるサバラ。……やっぱり夢魔という生き物は、例外なくどこか抜けているのかもしれない。  家から学校。少しずつ俺の平凡でない日常がテリトリーを広げているような気もするけれど、これはこれで退屈しなくて済みそうだ。 「まあ……のんびり、適当にな」  溜息をつき洗面所を出た俺は四人分の朝飯を作るため、腕捲りをして気合を入れた。

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