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第8話 男子高校生の夏休み・7
「はぁ、……ちょっと、のぼせそう……」
ぐったりと壁にもたれる俺の中から自身を抜いた天和が、着けていたスキンを外して口を結ぶ。それから俺に着けていたそれも同じようにして束ね、浴槽縁の端っこに置いた。
「汗流して、風呂出て冷たいモン飲もうぜ。マカが食うだろうしアイスも買ってくるか」
「天和、何でそんな元気なんだ……」
日頃から鍛えているかそうでないかで、セックスの後の行動力も変わってくるのだろうか? 天和は冷たいシャワーを浴びながら機嫌良さげに鼻歌まで歌っている。
「確かにアイス食いたいかも……」
バスタオルを頭に被せながら脱衣所を出ると、
「………」
「ど、どうしたんだ?」
廊下に立っていたマカロとサバラが、顔を赤くさせながらニコニコと笑って俺を見ていた。
「何だよ……無言でじろじろ見て、気持ち悪いなぁ」
恐らく浴室から匂いが漏れていたのだろう。サバラはまだ大丈夫そうだが、マカロは酔っ払ったようにふらふらしている。
「風呂、これから二人で入るんだろ? あんまり長湯しないように――」
「サバラ、マカ」
背後から天和が出て来て、二人に向かって何かを投げた。
「よく突入して来なかったな。その報酬だ」
「あ、ありがとう天和!」
上半身裸の天和がタオルで顔を拭きながら「気にすんな」と笑う。……サバラとマカロがそれぞれ手にしているのは、さっき外したばかりの俺達のスキンだった。
「………」
「新鮮な種をありがとう、炎樽くん」
「お、おぞまし過ぎる……。種取るって、そんな生々しいやり方なのかよっ?」
げんなりしながら問うと、サバラが妙に自慢げな顔でふんぞり返って言った。
「この方法もアリではある。人間界のコンドームといえば、俺達の世界でも重宝されるほどの精度の高さだからな。これに密封しておけば、ある程度は新鮮なまま俺達の世界へ送ることができる」
「……頼むから溜め込まないで、こまめに送ってくれよ」
そんなこともありつつ、別荘での楽しい時間をめいっぱい満喫した俺達は翌々日の午後になって再びサバラの運転で地元へ戻った。
「ただいま!」
玄関に靴があったからすぐに分かった。母さん達が帰ってきているのだ。
「おかえり、炎樽。随分日に焼けたねぇ!」
「は、……はじめまして。鬼堂天和です」
ガチガチに緊張している天和と、
「あああ! 炎樽の母ちゃん!」
何故かテンションマックスのマカロ。そして、
「お綺麗なマダム、初めまして。砂原と申します」
さり気なく俺の母さんに取り入ろうとしているサバラ。
二人の母さんはそんな俺達を見て、茫然と目を丸くさせている。
「炎樽。あんた、友達増えたねぇ」
「しかも皆男前だし。やるじゃん、炎樽」
その言葉に照れ笑いする俺を見て、天和が苦笑した。
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