165 / 215

※高価な虫除け。

寝室でおれらの帰りを待つでかいぬいぐるみを治が掴んで床に落とす。 「おい、何すんだ!」 「邪魔だろ」 「邪魔じゃねぇ!」 拾い上げようとするおれの手首を捕まえ治が顔を寄せる。 「じゃあおれに抱かれるのと、このぬいぐるみ抱いてるのと、どっちがいいんだ」 「ガキか」 「選ばせてやる。どっちがいい」 そんなもん、選ぶまでもない。 「お前に決まってんだろ」 ノーマルだったおれの身体を開き、侵入し、掻き回し、ケツでイケるまでにした。 欲しがって疼く夜が嫌いになった。 帰りが遅いお前を待って寝る夜は、こいつがお前の代わりになってくれる。 あたたかさも少しの強引さも、打てば響くような擽ったさもないけど、それでも。 「けど、こいつもいるんだよ。 ………お前が買ってきたんだろーが」 「真由ちゃんが見たら笑いながら写真撮りまくりそうだな」 「あ」 真由で思い出した。 「何だ?」 「ちょっと待ってろ」 ウォークインクローゼットに置いてある、今は使っていない鞄を漁る。 数日前に届いたブツを持って寝室に戻ると、床に捨てられたぬいぐるみがベッドの端に乗せられていた。 後ろ手に隠していた箱を治に突き出す。 「ん」 「何だこれ」 「ん!」 「プレゼント?お前が?」 「んー!!」 治がくはっと噴き出した。 「わかったわかった。開ける」 なんとなく見ていられずプレゼントを開ける治とは反対側に座り、背を向けたのにちらちらと振り返る。 「万年筆か。良いな」 嬉しそうな声に顔が綻ぶ。 散々悩んだ甲斐があった。 黒く光る万年筆には名前を刻んでもらった。 仕事で使うだろうから、誰に見られても恥ずかしくない、とびきり良い物を選んだ。 おれが使うならそこらのボールペンで充分だが、こいつには良い物を持ち、使ってほしいと思う。 「大切にする。ありがとう」 振り返った治に前髪を掻き上げながら撫でられた。 「ん…」 撫でた手が頬を包む。その手を捕まえ顔を滑らせ手のひらにキスをする。 愛しい、大切だと告げるように触れるお前の手が好きだ。 ……言わないけど。 だから、早く触れ。 眉間の皺が伸びた、おれの前でだけするその顔のまんま組み敷け。 ギシとベッドが鳴る。 「サービスはまた今度な」 「あ?」 「お前にサービスされなくても準備万端だから」 「どこでスイッチが入ったのか謎なんだけど」 下から見上げるおれの、目にかかる髪を治の手が優しく除ける。

ともだちにシェアしよう!