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第19話
2月11日の祝日、葵はまた綜大と街に出ていた。
ショップのいたるところに赤やピンクのハートが飾られ、街はバレンタインデー一色に塗り上げられていた。
そんな中を歩きながら、綜大がぼそりと言ったのだ。
「期待してるからな」
「何を?」
葵には、本当に解らなかったのだ。
綜大が何を言っているのかが。
だが、こちらを向いた綜大の顔もまた、解らない、といった風だった。
きょとん、とした顔がふたつ。
「解らないのか?」
「だから、何が」
そこでようやく、口をもごつかせて綜大が言った。
「チョコレートだ」
「チョコレート?」
「バレンタインの、チョコレート」
想像を絶する綜大の発言だった。
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