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第32話

「こうやって、二人で天井をながめるのって、いいね」 「そうか?」  葵は綜大の腕枕でベッドに寝たまま、天井を眺めていた。  白い天井。  ほんの最近までは、悪夢の象徴のようなものだったけれど、今は違う。  まるで、空に浮かんだ白い雲みたいだ。  柔らかくって、優しくて、どこか素敵なところへ連れて行ってくれるような。 「ちょっと待ってて」  葵はベッドから降りると、バッグから携帯を取り出し操作した。 「どうしたんだ?」 「家族にね、ライン送った。今日は友達の家に泊まるから、って」 「いいのか?」  今夜は何だか、ずっと綜大の傍にいたい気分なんだ。  嬉しそうに笑う綜大の顔が、愛しい。  葵はベッドに身を投げ出し、もう一度白い天井を眺めて微笑んだ。

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