12 / 123

見覚えのある顔、恋人と店に来た。 雨の中を歩く姿は泣いているように映る。 「風邪、ひくよ」 傘を差し掛けた。 「ほっとけよ」 涙は本物だった。 つらい別れが雫に浮かぶ。 その日から家にいる。 寂しがりやで甘えん坊、なのに強がり。 だからこちらから呼ぶ。 「おいで」 外は雨、どこへも行かず家にいようか。

ともだちにシェアしよう!