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切り立った崖に立ち、あいつを思う。 荒れ狂う波に、狂おしさを重ねる。 演歌の世界、情念だ。 だけど……暑い。 炎天下の崖に立ち続けるのはつらい。 置手紙をした。時間も指定。 なのに来ない。 「クソっ」 熱中症で倒れそうだ。 無駄と悟り、海から陸へ視線を移す。 あいつがいた。 涼しげな木陰に立っている。

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