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二人きりの寝室で③

「ん」  小さく答えて、一旦身を起こした。その理由はわかっているけれど今は不満だった。  一瞬でも離れたくない。  一瞬でも早く繋がりたい。  そんな気持ちが身を焦がす。  弘樹は体を起こしてどこかへ手を遣っている。それはベッドの横に置いてあるサイドボードだ。なにがあるか、それは『夜』に必要なものに決まっている。  ごそごそ、だの、がさがさ、だの物音がする。  じりじりしてたまらなかった。焦らされているような錯覚を感じてしまうし、こんな準備万端状態で放置されるのも居心地が悪い。  けれどやはり要るので。ゴムというものは。  もどかしい時間がやっと過ぎて、ぐっと脚が持ち上げられた。胸につくほどに開かされる。その無防備になった奥に熱いものが押しあてられた。  どくどくと脈打っているのがゴム越しにも感じられる。その感触と感覚にどきどきしてしまう。  この瞬間が一番心臓が高鳴るかもしれない。このあとの快感と幸せを期待して。 「ユウ、力、抜いて」  何度もしているというのに弘樹は優しい。そう言ってくれる。 「ん」  答えてさっきと同じように弘樹の首に腕を回した。すぅ、と深く呼吸をする。 「うぁ……っ! は、ぁ……!」  ぐぐっと押し込まれたそれにはたまらず声が出てしまったけれど。  閉じていたところをこじ開けられる感覚。どうしてもつらい。  けれど同じだけの幸福感が身を満たしていく。そのつらさのぶんだけ弘樹が身の内にいてくれるのだから。 「はぁ……、大丈夫……?」  奥まで入ってきて、やはり聞かれた。受け入れたばかりの体はまだ落ちつかなかったけれど、游太はただ頷く。  今は早くほしくてならない。このあとの快楽が。  そしてここまできてしまえば弘樹が手加減することはない。游太の腿に手をかけて、体勢を整えて動きはじめた。最初から獲物を貪るように。 「ふぁ……! あ、……う、はぁ、あぁっ!」  首に回した腕に力が入った。弘樹にしがみつく。揺さぶられる不安定さに。  奥まで抉られて、また引き抜かれて、腰を打ち付けられる。  しっかり慣らしてもらったので痛みはない。不快感も吹っ飛んでしまった。快感と満足感がたっぷり湧いてくる。  これがほしかった、と思う。  それはもう、あの不快を感じた飲み会の間から。  身を繋げる幸福感と安心感。セックスでしか感じられないわけではない。  けれどその重要なひとつではあるから。そういう単純なものから得たいと思ったって良いだろう。 「ヒロ、……っあ、い……きも、ちい……!」  その気持ちのままに口に出す。口に出すことで増幅するような気がした。  身の奥で心地いい感覚が膨れ上がる。それが弾ける瞬間を思ってぞくぞくした。 「ん……っ、ユウ、かわい……」 「んん!」  感嘆の声で言われて歓喜に胸の内が震えると同時、くちづけられる。くちびるからも繋がって、もうどこで快楽を感じているのかも不明瞭だった。ただ、ふわふわと心地いい。  随分早いような気がしたが、こんな状況では当たり前かもしれなかった。 「ヒロ、も、ぅ……!」 「ん……、一回、イく……?」  言われるなり腰の動きを速められる。感じる場所を抉り、また引かれ、同じ場所を突かれる。そこばかり刺激されればたまらずに、びくびくと身が跳ね、背筋から頭の先まで快感が貫いた。 「う、ぁ……っ! ヒロ、あぁっ!!」  ぎゅう、としがみついて最高の快感を味わう。びゅくっと腹に白濁が散った。  ナカで感じる快感は性器へのものと少し違って、ぼんやりするような甘さが脳内にとどまる。ふわふわとしたそれが心地良くてしばらく浸っていたかったのだけど。 「あ……っ!?」  游太の意識は強制的に現実へ引き戻された。ぐりっと感じる場所を抉られたゆえに。  何故かなど一瞬で理解した。ナカのものはまだ硬いままだったので。 「ちょ、あっ、待っ……!」 「無理……!」  イッた直後なのだ、刺激が強すぎて訴えたけれど、今度優しい言葉は返ってこなかった。激しく腰をぶつけられる。ナカを懐柔されて、つらいほどの快感が游太を襲った。 「ふぁっ、あ、う……っん、ぅ……っ」  快感から逃げたいけれどしっかり捕まえられてしまって動けない。達した快感だってまだ消えないのに、次から次へと刺激を与えられる。頭の中がびりびりと痺れた。 「ひ、ぁ! あ、もう、むり……!」  ついに訴えたが弘樹は動きを止めてくれない。それどころか更に奥まで抉ってきて游太の息が止まる。  食べ尽くされてしまう。何度か感じたことのある気持ちが身を襲った。 「ユウ、ユウ……! すき……!」  荒い息の下で呼ばれた名前とそれに、違う意味で息が止まった。  游太がほしかった言葉。わかられていたのだろうか。  そうでなくとも游太にとって幸福感をたっぷり感じられる優しい言葉であったことには違いなく。体よりも言われた言葉から一気に押し上げられてしまう。 「うぁ……あ、ヒロ、ヒロぉ……!」  どくっと一瞬で熱が弾けていた。  そして今度は游太だけのことではなかった。小さく呻くような声がつかれて、びくびくっとナカのものが打ち震える。  ゴム越しでは入ってこないけれど、熱い液体の感覚を僅かに感じた。それだけでじゅうぶんだ。 「はぁ……、ぁ……ふ、……」  幸福感と、快楽からの体の満足。  両方味わって、一気に眠気が游太を襲った。  力を抜くと同時。眠りに引きずり込まれるのは一瞬だった。あとのこともなにもなく、夢の中に引き込まれてしまう。  寝落ちた游太を見て、弘樹がちょっと困ったように笑って髪を撫でてくれたのも、認識できないほどに深く。

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