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恋人が最近余所余所しい(3)
その日から、健と顔を合わせる時間が短くなった。
彼は朝早く出て、帰りは買い物から合流する。食事から風呂の間は時間があるけれど、健は皿洗いや部屋の片づけなど、何かにつけて賢太郎から離れようとして、まともな話が出来た試しがなかった。折角同居しているというのに、明らかに避けられていた。
健は風呂も賢太郎の後に入るようになって、しかも入浴時間が長くなった。待っている間に睡魔が襲ってきてしまったこともあるし、頑張って起きていたのに健が早々に眠りについてしまったこともある。
今回の旅行のためにバイトに多く入っていたこともあり、二人でゆっくりするタイミングが見つけられなかった。
健は、賢太郎の料理を相変わらず褒めてくれる。美味しい、と言ってくれる。食べている間は少し元気になってくれるけれど、時折ぎこちない、寂しそうな笑顔を見せたりする。
そんな健を見て、賢太郎はフラストレーションが溜まっていた。せめて見つめ合ってキスしたい。たくさん頭を撫でてやりたいのに、それすらも最近出来てない。寝ていて意識のない健にそれらを行っても、虚しい気持ちになるだけだった。
旅行の計画を早めに立てておいてよかったと思った。二人で旅行がしたいと話したのがあの日の後だったら、健は用事が入ったなどと理由を付けてどんどん先延ばしにするであろうことが目に見えていたからだ。
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