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津黒(星の話 パラレル風短編)
テーブルに並べた6つの白い小皿を眺めて津黒 は腕を組み、考え込んでいた。皿の上には微妙に色の違う粉薬が少量ずつ盛られている。
「ううん……見てたってどうせわかりゃしねえんだ、テキトーに混ぜちゃえ!」
独り言を呟くと、津黒はスプーンを手にしてそれぞれの皿から粉をすくい、広げた薬包紙の上で混ぜ合わせた。
――この粉は、闇の薬物を扱う店で調達してきた物だ。
政府軍のお偉いさんが、自分好みの人造兵に夜伽の相手をさせる時に施すという、発情誘発剤――媚薬の事だろう。それを自作しようという企てなのだ。
誘発剤を使えば、通常は性欲を持たない人造兵とも性交渉が持てる――らしい。
人造兵用のその手の薬には正規品があると聞くが、入手には正当な理由が必要で、津黒のようにただの悪戯 目的では当然許可は下りない。
そこで津黒は、自分で資料をあたって誘発剤に使われているという成分を調べてみた――それは意外と簡単にわかったのだが、肝心の、配合の割合が見つけられなかった――あてずっぽうでやるしかない。
「ま、音羽 は頑丈だしな、多少間違ってたって死にやしないだろ」
無責任なことを言いながら津黒は薬包紙で粉を包んだ。
夕方――薄暗くなってきた頃、いつものように音羽が、津黒の営む古書店へ姿を現した。
音羽は敵軍――政府側に製造された人造兵だ。
捕虜として捉えられ、この星にある収容所へ入れられていたが、なにか人助けをしたということで恩赦を受けて解放され、現在は外 で働いている。
しかしまだ厳しい監察下に置かれていて、門限などの決まりを破ったり、人と揉め事を起こしたりすれば、すぐに収容所へ戻されてしまうという。音羽は津黒の店で売っている紙製の古書籍が好きらしいのだが、物資、職人ともに不足している今、凝った装丁の本は価格が高騰していて、音羽の収入では買うことが出来ない――人造兵に興味が湧いた津黒は、それらの音羽の弱みに付け込んで、身体と引き換えにすれば、店内で好きに本を読ませてやると約束したのだ。
それ以来、音羽は毎日仕事帰りに古書店へ寄って行き、津黒に身体を触らせた後、本を読んでいくようになった。
だが、津黒がいくら興奮させようと肌への刺激を試みても、人形をいじっているのと同じような具合で――音羽は全くなんの反応もしないのだった。
津黒は内心ガッカリした。人造兵はそのままでは性欲が無いというのは津黒も知っていたが、まさかここまで無反応とは……。だが、好みのタイプの人造兵を好きにできるというせっかくの機会なのだ、なんとしても音羽の肉体 を楽しんでやる、と、津黒は誘発剤の自作を企てた――
「ああ音羽ちゃん!待ってたよ!」
ついウキウキと声をかけた津黒に目をやり、音羽は何か不審に感じたのかわずかに眉を寄せた。
「なんだよぅ、そんなカオすんなって……いいからいいから!こっちおいで!」
何がいいからなのかよく分からないが、調子の良いことを言いつつ津黒は店の二階にある寝室に音羽を引っ張り込んだ。
「ちょっとこれをさ……飲んでみてくんない?」
先程の薬の包みと、水の入ったプラカップを手渡す。音羽は手の平の中の包みを見ながら
「これは?」
と尋ねた。
「怖くない!怖くないから大丈夫!ささ、ぐっ、とどうぞ!」
普通いきなり手渡された怪しい薬を説明もないまま飲んだりする者はいないだろうが、音羽は普通とは言い難いうえ、高価な本をただで読ませてもらっているという負い目があるせいか津黒にはけして逆らわない。今回も素直に言われるまま包みを開いて、中の粉薬をカップの水と共に飲み干した。
「どう……?」
「どう、とは?」
訊ねた津黒を音羽が見返す。
「いや、だからその……」
どの位で効き目が出るものなのだろう?津黒が疑問に思った時、ふいに音羽の体がふらつき、手に持っていたカップが床に滑り落ちて転がった。
「え!?あらら!?」
びっくりしている津黒の腕の中に音羽が崩れるように倒れ込んでくる。津黒は慌てて彼の身体を抱きとめた。
「ちょ、ちょっと!?音羽ちゃん!?ええ!?ね……寝てんのかよ!?おい!?」
ひきつった顔で声をかける津黒の腕の中で、音羽はすやすや寝息を立てていた。
「つまり、調合が悪かったってわけなんだよ。効き目はあるんだ、うん」
薬品の皿を前に、津黒は再び独り言を呟いていた。
先日音羽に飲ませた薬は失敗だったようだ――あの後音羽は津黒の寝床で小一時間ぐっすり眠ってから目を覚まし、やけにすっきりした顔で帰って行った。
「次は成功させないとなぁ……材料費だって安くなかったんだし」
言いながら津黒は、調べてかき集めてきた薬品成分の資料に再度目を通した。
特殊なものもあって素人には完全に理解するのは難しかったが、ある程度、どの粉薬にどういった作用があるのかは把握できた。先の失敗はどうやら、リラックスさせるための鎮静作用を持つ成分を多く入れすぎてしまったかららしい。
「また寝られちゃ困るんだ……どうか上手く行って、今度こそちゃんと興奮させられますように……!」
勝手な願いを呟きながら、津黒は粉薬を混ぜ合わせた。
目の前に突き出された津黒の掌に乗せられた薬の包みを見ながら、音羽は訊ねた。
「これは、この間のと同じ物か?」
「そ!同じ!」
「ふむ」
呟いて音羽は包みを受け取ったが、首を傾げて津黒に訊く。
「あれだけの熟睡というのは経験がなかったし、なかなか快適で良かったのだが……本を読む時間が削られるのは少々惜しいような気が……」
「本は逃げやしないから!ほら、飲んで飲んで!」
音羽は何か言いたげな表情で津黒の顔を見たが、黙って素直に薬を飲んだ。
飲み終わった音羽を津黒はじっと見ていた――前回は割合すぐ効き目が現れたから、恐らく今回も――?音羽は手に持ったカップをぼんやりした表情で眺めている。ちょっと――目つきが変わってきたような……?津黒がそう思った時、音羽が小さくしゃっくりをした。
反応が出てきたのか?期待した津黒の目の前で、音羽は突然咳き込み始めた。
「え!あら!うわ、大丈夫!?」
カップを取り落とし、前屈みになってむせたような咳をしている音羽の背を津黒は慌ててさすった。
「ま、またなんかまずったかな!?音羽ちゃん!?オイ!平気か!?」
声をかけた津黒の襟首を、音羽が下から片腕を伸ばして掴み上げる。
「……ゴホッ!店主……貴様一体何を……飲ませた!?」
「え!?な、ナニってその……」
「何を飲ませたのかと訊いている!答えろ!」
「グヘッ!」
喉を締め上げられたまま殆ど身体を持ち上げられて津黒は目を白黒させた。大の男を片手で……さすが人造兵、すげえ力だ。いや、感心してる場合じゃないぞ!?これは、やばい…!
「ご、ごめんなさいごめんなさい!出来心で……!たっ、ただの発情誘発剤です!毒とかじゃありません!」
「発情誘発剤?」
片手で津黒の襟首を取ったまま音羽は呟き、空いた方の手で口元を拭った。
「なんのために?」
「な、なんのためってその……音羽ちゃんと、セックスしたかったからに決まってるでしょ!あんたいくら身体触っても無反応でちっとも面白くないんだもの……!」
「面白くないだと!?」
音羽は目を吊り上げた。かなり気に障ったらしい。普段無表情なだけに迫力がある――津黒は思わず覚悟した。これはただでは済みそうにない。ボコボコにされ――いやそれどころじゃなく、殺されるかも!?
「ヒック!では――試してもらおうではないか!」
酔っぱらいのようなしゃっくりを一つして、音羽は津黒の襟から手を放した。津黒は床にぺたんとへたりこみ、手で喉を庇いながら肩で呼吸した。
「た、試す?」
「そうだ」
音羽は着ているシャツのボタンを外し始めている。
「な、なにしてんだよ!?」
うろたえた津黒の顔に、音羽は脱いだシャツを叩きつけながら言った。
「自分とセックスしたいと店主は今言ったではないか!忘れたのか!?本当に面白くないかどうか確認してみるが良い!」
「え!?ええ~!?本気!?」
「本気に決まってる!」
びびっている津黒に構わず音羽は乱暴にズボンから両脚を引っこ抜き、下着も脱ぎ捨てて裸になってしまった。
「店主の番だ!脱げ!」
「ぬっ――脱げって!?お、おい音羽!」
音羽は床にへたりこんだまま後退った津黒のシャツに手をかけ、無理矢理脱がそうとする。積極的なのは嫌いではないが、これはちょっと――いや大分、イメージしていたのと違うぞ!?
「よ、よしなさいってば!こら!止めろって!」
津黒が怒鳴ると音羽は手を止め、不満げに言った。
「ではどうするのだ?脱がなければセックスはできないだろう!?」
「そうですけど……!ムードってものが皆無でしょこれじゃ……!」
「ムードだと?」
顔を顰めて音羽は言った。
「そんなものはどうでもいい!早くしろ!」
裸の音羽に圧し掛かられて津黒は仕方なく、シャツのボタンに手をかけた。急かすように音羽がその下のボタンを外す――そこで津黒は気がついた。音羽の呼吸が速くなっている――怒っているのだとばかり思っていたが、どうやらそれだけでは無いらしい。
「音羽お前、もしかして――?」
ベルトに手をかけ、外そうとしている音羽に津黒は呼びかけた。
「もしかして、なんだ?」
俯いて手元を見ていた音羽が顔を上げる。頬が上気して、微かに潤んだ目の縁がうっすらと赤味を帯びていた――これは確実に――欲情している。あの、何をしても全く無反応だったこいつが?きっと誘発剤が効いているのだ――急に津黒は楽しくなってきた。
「なあオイ、待てよ」
津黒は音羽の腕を掴んで訊いた。
「お前……経験あるのか?やったことあるのか?男と」
音羽が首を横に振る。
「しょうがねえなァ……経験も無いくせに俺を押し倒して主導権取ろうだなんて……十年早いってーの」
身を起こすと、津黒は音羽の両腕を捕まえて引き寄せ、唇に強引に接吻した。音羽が戸惑ったように目を見開く。津黒は唇を離し、苦笑混じりに言った。
「目、閉じて――口開けろ。そんな風に歯食い縛ってちゃ駄目だ……リラックスしろよ……」
音羽は言われた通りに唇を僅かに開けた。津黒は再び口付けると、その隙間に舌を捻じ込んだ。
「あぐ……ふ……ッ」
舌を絡め取られて音羽が呻く。津黒は今度は逆に、音羽を押し倒し床に押さえつけた。
「……店主?」
先程までの勢いは影を潜めてしまい、音羽はやや怯えたような様子で津黒の顔を見上げた――津黒の態度が変わったのに気付いたらしい。
「せっかくのバージンを頂くんだから、楽しませてもらわないとなぁ……」
上に被さった津黒が、指先で裸の両脇をなぞって撫で上げてやると、音羽は顔を顰めて小さく身を捩った。
「くすぐったがったりなんてした事なかったのに……違うもんだな」
撫で上げた手でそのまま両の乳首を摘んで捏ね上げる。
「お?お前、ここ感じるんじゃねえか?ホラ、こんな尖らせちまって――コリコリしてる」
「んぁ――ア!」
そこを摘まれたまま音羽は背を仰け反らせ、耐えかねたように声を上げた。えらく敏感になってるようだ……薬の効果に感心しながら、津黒は今度は音羽の胸に顔を寄せて乳首を吸い、軽く噛んでやった。音羽がさらに身悶える――普段の無反応とは雲泥の差だ。
「そんな気持ち良さそうにされると、張り切っちゃうな俺」
下に組み敷いた音羽の身体を、指を這わせながらあらためて眺める――今までもさんざん弄り回して玩具 にしてはいたのだが、性的興奮を覚えている時とそうでない時とではやはり印象が随分違う。引き締まって美しくはあったが硬質で、ずっと余所余所しかった身体が今は――津黒の手に弄ばれるまま素直に反応を示している。指先で肌を撫でられるたび、ぞくっとするのか、キュッと引き絞るような動きを見せる腹部の筋が、津黒の目に酷く扇情的に映った。
「そろそろこっちも、触ってやろうか?」
肌を撫で下ろしたその指を下腹部の茂みに這い込ませる。人工物のせいなのか音羽のそこの毛はとても柔らかい。
「しかしお前の身体は、どこもかしこも手触りがいいよなあ――政府軍のお偉いさんはかなりの助平ってことだわな。こんなのを何体も侍らせて喜んでるっていうんだから……」
しかし一体だけでも、偶然手に入れることが出来た俺はけっこうラッキーだ。
「おい、脚開け。奥に手が入んねえよ――リラックスしろって言ったろ?」
恥毛を指で軽く梳きながら津黒は声をかけた。緊張しているらしく音羽の両腿は硬く閉じられている。
「……しかし――そこは……」
音羽は当惑した様子で答えた。急所である部位を津黒に完全に預けるのは抵抗があるらしい。
「まあ初めてじゃ仕方がないかな。じゃあいいや。慣れれば自分から広げたくなるだろ」
笑いを含んだ声で津黒は言い、音羽の性器をそっと掴み上げた。顔を近づけ、そのまま先端を口に含む。
「アッ!?」
先を吸われ、次いで茎に舌をねっとりと絡みつけられ――音羽は悲鳴に近い声を上げた。津黒はそこから口を離して囁いた。
「良かった――いつもピクリともしねえから、ちょっと心配してたんだよ、形はいいけどただの飾りじゃねえのかなあって。どうやらちゃんと使えるみたいだな」
「つっ――使え、る、とは?」
息を切らしながら音羽が訊ねる。
「自分で見てみろ」
立ち上がってきたそこを握って、津黒は音羽に示した。
「硬くなって――勃ってきてるだろ。触られたら、こうなんなきゃ駄目なんだ。ほら、こうして擦ってやるともっと――」
握った手を上下に激しく動かす。音羽は忽ち反応を示して仰け反った。
「あぅっ――!ああっ」
「気持ちいいんだろ?そうだよな。こんなに硬くなってるし……」
完全に勃起させたのを確認してから、津黒はそこを擦るのを止めた。音羽がこちらを見る。
「切なそうな顔するなよ。今度は俺の番なの」
「店主の?」
津黒は立ち上がると、ズボンと下着を取り去った。床に横たわっている音羽の頭に手をやり、軽く髪の根元を握って引き起こすと、自分の前へ跪かせて顔を下腹部に近づけさせた。髪を掴まれたまま音羽が視線だけで津黒の顔を見上げる――反抗心がある訳ではなさそうで、単に、どうしたらいいかわからない、という表情だ。
「咥えるんだよ」
音羽の唇に、津黒は自身の先端をあてがった。
「舌に載せて――しゃぶれ」
言われるまま音羽が津黒のモノを口に含む。音羽の口腔内は思ったよりも温かく、舌は熱いくらいだった――普段の音羽は人間よりもやや体温が低い。先刻キスした時にもこんな風ではなかったので意外に感じる。これも薬のせいかもしれない。
音羽は目を閉じて口を一杯に開け、津黒の腿に縋りつくようにして股間の物をしゃぶっている――津黒は声をかけた。
「音羽――自分の、触ってみ?俺のがお前のソレと同じくらいの硬さになるまで頑張れ」
口を離さないまま音羽は、素直に片手を自身にやった。硬さを確かめるように指でそれを探っている。可愛いもんだ、と津黒は思った。俺の言いなりじゃねえか。
音羽にふと愛おしさを感じたせいか――津黒のそこが強く反応した。喉の奥を突く形になったらしく音羽は苦しげな声を漏らしたが、咥えるのをやめようとはしなかった。変なところで真面目なのだ。
「おい音羽――おい、もういいよ、充分だ」
不甲斐なくもいきそうになってしまい、慌てて津黒は音羽の頭をそこから離させた。
「こっちで出しちまう前に、音羽ちゃんのバージン頂かないとさあ……そのために苦労してんだから」
ぶつぶつ言いながら津黒は音羽を再び仰向けに押し倒した。膝に手をかけて脚を開かせてみる――今度は音羽は素直に従った。
「店主、なにか――おかしい、そこが」
音羽が切れ切れに言う。
「おかしいってどこが?」
「ア!そ、そこ――今、店主が握っ、て――あ!」
両腿を抱えた津黒に中心を強く扱き上げられ、音羽は全身を引き攣らせている。
「だめ、だ、熱――くて……!止めて欲し――」
「馬鹿言うなよ、イきかけてんだろ?ここで止めたらお前、かえって大変な事になっちゃうよ?」
「イく、とは?これ、が……?しか、し――アッ!」
「もしかしてお前――イくのが怖いのか?初めてだから?」
片手を伸ばして、自分の中心を握った津黒の腕の動きを止めようとしている音羽に訊ねると、彼は不安そうな表情をして、津黒に向かって小さく数度頷いた。
「大丈夫だって、馬鹿だな――」
薄く笑って津黒は腕の動きを逆に速めた――音羽が大きく背を仰け反らせる。
「ちが――そんな!店主!」
搾り出すように叫んだ音羽を、津黒はさらに追い詰めた。
「あ!うぁ――あッ!誰か、助け――」
津黒の手に容赦なくそこを擦られ、音羽は真に迫った悲鳴を上げた。
「ば、馬鹿!隣に聞こえたら――通報されちまうっての!」
慌てて音羽の口を空いた手で塞ぐ。
「んぐ……う!」
津黒の掌の中でくぐもった声を上げながら、音羽は達した。
「うッ……ふ……」
精を放ったその部分は津黒の手の中で硬さを失って行ったが、まだ達した時の感覚は続いているらしく、音羽は腰を小さく突き上げるようにして痙攣させている。
「ああびっくりした……ついイかせちまったじゃんか、もう少しいじめたかったのに。始めから口塞いどきゃ良かったよ……」
ぶつくさ言いながら津黒は、たった今音羽が出した温かい体液が絡み付いた手を、そのまま彼の尻の奥へと差し入れた。濡れた指先で柔らかな肉を押し開き、目的の場所を探る。
「ン――っ!?」
放心していた音羽が、身体をびくりと緊張させた。
「おい、もうでかい声出すなよ?」
念を押して、津黒は音羽の口を塞いでいた手を外した。
「――店主?なにを――」
「なにって、これからが本番なんだよ」
「ほ、本番?――う。くっ!」
目をぎゅっと閉じて音羽は呻いた――音羽の奥の穴を探り当てた津黒が、中指をそこへ突き入れたからだ。
「うーん、狭いな畜生……挿入 るかな……?いや絶対入れさせてもらいますけど……」
「あぁ!あ……ッ!」
津黒に指を進められる苦痛のためか、音羽は脚を大きく開いて腰を浮かせた。
「あられもない格好見せ付けやがって――案外好きなんじゃないか?お前も」
興奮してきて、津黒の呼吸が速まった。
「入れてやる――力抜いてろよ」
指を引き抜いて音羽の片脚を担ぎ上げ、津黒はそこに自身をあてがい、ぐいと打ち込んだ。
「きついなァ……」
やはりすんなりとは入らない。音羽は声を出す余裕も無いようで、ただ激しく喘いでいる――そうしながら手がかりの無い床を掴もうとするかのようにして、爪を立てた。
「滑り、が少し――足りなかったかな――でも、全部――入ったぜ」
津黒も喘いだ。音羽の中は熱く、入り口は津黒の突き入れたそれを、時折きゅっと強く締め付けてくる――この身体――今まで寝た相手の中で一番いいかもしれない。人造兵か――やべェ、ハマるかも……思いながら腰を打ち付ける。
「あ!あ、あっ、あ!」
音羽は頭をのけぞらせ、津黒に打ち込まれるのに合わせて声を上げた。
「ん……っ」
俯いて津黒は音羽の中で達した。さらに数度、腰を押し付けて余韻を味わってから、自身を引き抜く。
「音羽ちゃん、大丈夫か――?堪能させてもらったよ」
抱えていた音羽の片脚を床に下ろす。犯したばかりの音羽のそこからは津黒の体液が少し零れ出、滑らかな肌を汚していた。
「初めてでいきなりナマ中出しは、ちょーっときつかったかなあ?」
津黒はからかうように言い、音羽の姿を眺めた。彼は放心したような表情で床にぐったりと手足を投げ出している。
「バージン美味しくいただいて俺は満足したけど。あーあ、さて、と」
津黒は伸びを一つして腰を浮かせ、立ち上がりかけた――と、音羽が、手を伸ばして津黒の片足首を掴んだ。
「は?なんだよ?」
「どこへ行く?」
「え!?どこって――シャワーでも浴びてこようかな?と……」
「まだ早い」
そう言いながら、音羽は津黒の足首を掴んだまま半身を起こした。
「自分はまだ、満足していない」
「はあぁ!?」
驚いて間抜けな声を上げた津黒の足首をぐいと引く。床にずでんと尻餅をついてひっくり返った津黒の両肩を、音羽は恐ろしい力で掴んだ。
「もう一度!」
「もう一度って!?う、うそぉ!?」
悲鳴を上げた津黒の背を音羽は床に押し付け、伸し掛かった。
それから――さんざん津黒は音羽の相手をさせられた。どうやら薬の効き目が切れるまで音羽は発情し続けるらしい。恐ろしくなって途中で逃げ出そうとした津黒に気付くと、音羽は部屋の中の家具を軽々動かしてドアの前に積み、開かないように塞いでしまった。
監禁状態じゃないのこれ!?やべぇ!ほ、ホントに死ぬまでやられるかもしれない……!音羽に上に乗られたまま津黒は青褪めた。あのインチキ誘発剤が一体いつ切れるのやら皆目見当がつかない。知ってる体位は既に全部試してしまって、もうネタ切れだ、どうしよう……!?
こうなったら、なんとかスキを見て窓から逃げるしか……津黒が思った時、上に跨って腰を揺すっていた音羽の動きがふと止まった。音羽はそのまま瞬きを数度繰り返し、不思議そうな表情で津黒を見下ろした。
「……店主?」
「お、音羽、ちゃん……?」
「この状態は?いったい……?」
音羽は首を傾げている。どうやらようやく……薬が切れたらしい。
「あのう……コレ抜いていいですか、ね……?」
心底ほっとして、津黒は下から訊ねた。
「良かったような悪かったような……音羽はやってた間の記憶が殆どないみたいだし……」
翌日――津黒は呟きながら、例の薬品をひとまとめにして箱にしまった。フタをテープでしっかり留め、それを地下にある書庫の、奥の棚に押し込んだ。あれは……成功だったのかどうなのか……?
津黒は棚を眺め
「これは……死ぬ覚悟ができた時に使お……」
と独りごちて頭を振り、階段を上がった。
おしまい
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