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第30話
佐野と黒崎の間に、寝ぼけた声が割ってきた。
「おはよう……。黒崎さん、シャワー借りるね」
「いつものように、好きに使え」
「ありがと」
むむむ、と佐野はさらに顔に血を上らせた。
「黒崎、いつものように、って、どういう事だよ!?」
「聞いた通りだ。不安だったら、しっかり捕まえておけ」
黒崎は新聞と共に、昨夜の本をリビングへ持ってゆく。
もう、読む事もないだろう。
「おい、寝たの? お前たち、ヤッたことあんの? ねえ!?」
「さぁな」
本のタイトルは『夫婦喧嘩を収める50の方法』だ。
今度はお前がヤキモチを妬く番だな、と黒崎はいたずらっぽく笑った。
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