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第1話

 僕とあいつは家がお隣さんで幼馴染同士。小さいころから一緒に育てられたようなもんで、仲が良くていつも一緒に遊んでた。でも、あいつは僕より10センチ以上も背が高くなり、偏差値も10ぐらい高くなり、見た目も10倍ぐらいカッコよくなり、僕たちが一緒にいることはなくなっていった。クール系寡黙な一匹狼と陰キャ系目立たないモブって感じですか。  あいつ、女の子にめちゃくちゃモテるんだけど、なぜか誰に告白されてもみんな断ってきた。でも、今回振った相手が悪かった。結構美人でプライドも高かった、その女の子、振られた腹いせに妙なうわさを流したんだ。 「あいつ、女に興味ないんだ。気持ち悪い。」  かっこよくて、モテるあいつには、嫉妬とやっかみで敵がたくさんいたようだ。今までに振った女の子の、振った女の子を好きだったヤロウ達の、その恨みが一気に爆発して、学校の雰囲気は一気に悪くなった。あいつの対応も悪い。言い訳しても無駄だと思ったのか、それとも本当に何も思っていないのか、あいつは今まで通りの生活を淡々と送り続けた。そうすると、ますます反感を買い、ロンリー王子様系モテキャラから、単なる嫌われキャラになってしまった。とてもまずい状態だ。誰もあいつと話さない、存在無視の日常で、そして事件は起きた。「カースト上位ウェイ系パリピでも実際は結構地味な顔してるやつ」が言ったんだ。 「ずっと、無視して上から俺たちのこと見下してる感じ。ああ、女の子に興味はないもんね。パパ活?してるの?年上のお金持ってるおじさまとしか相手しないの、ってやつ。」  ここまではきっかけにすぎない、最大の事件は僕がキレたことだった。史上最大にキレた。「細目の奴の目が開いたら大変になる」ぐらいに(でも別に僕は細目じゃない)。 「こいつがそんなことしてるわけないだろう。自分勝手でもないし、人のことすごい考えてるやつだよ。だから好きになったやつ多いんだろう。顔だけじゃないだろう。」 「カースト上位ウェイ系パリピでも実際は結構地味な顔してるやつ」は、「お前誰?」みたいな顔をして僕の方を見た。 「なんだよ、お前。何かばってんだよ。似合わないけどそういうの。」 「ずっと一緒にいたんだよ。お隣同士の幼馴染ってやつ。よく知ってるんだよ。こいつ以上に。こいつ以上に僕はこいつのこと見てるんだよ。好きとか嫌いとかそういうレベルじゃないんだよ。悪く言うのやめてくれよ。」  まわりの人間はあっけに取られて呆然としてた。陰キャの僕の友達は陰キャらしく教室の端の方に避難し、カースト上位ウェイ系パリピは「何が起こったのか、ちょっとわからない」みたいな顔をし、そして僕は自分が盛大に人前で男に告白したことに気づき、頭に血が上ってぶっ倒れた。  気が付くと家に帰っててベッドにいた。もう学校行きたくない。あいつに会いたくない。恥ずかしい。なんでも耐えられたけど、あいつに嫌われるのは死刑宣告レベル。  ピンポン、呼び鈴の音。「あいつどうしてる?」あいつはお隣さんだから、まるで自分の家みたいにうちに入ってくる。母親にとっても、それは日常。「ああ、昨日はゴメンネ、運ばせちゃって。お姫様抱っこ、っていうのあれ?まさか自分の息子で見られるとは思わなかったわぁ。」なんてのんきなことを言って、「なんかね、頭痛いとかお腹痛いとか、出てこないのよ」「ふーん、二階あがっていい?」「どうぞ」  僕は、合わせる顔がなかったから布団をかぶって丸まっていた。あいつは僕の部屋に入ってきて黙ってベッドに座り、布団にくるまる僕にもたれたて、こう言った。 「これで俺たち、二人でいじめられキャラだな。」 僕が何も返答せず黙ってたら、あいつは話し出した。 「なんであんなこと言った」 「関係ない」 「関係ないことはないだろう、元はと言えば、俺の問題で」と言ったとき、僕は布団から出て大声で叫んだ。 「もうおしまいだ、次から僕は史上最大のいじめられキャラだ。もともと陰キャなのに、なんでなんで。お前みたいにモテモテで嫉妬されていじめられた奴と違うんだよ。」  そしてまた布団にくるまった。あいつは布団の上から丸まってる僕のことをそっと抱きしめた。そうして小さな声でこう言ったんだ。 「俺はお前がいたから我慢できたけど。気づかなかったかな、念じてたんだよ、昔から。こっち向けこっち向け、って。でもお前向かないの、一向に俺の方見ないわけ。こっち向け、こっち。ほら俺を見ろって。」 「念じ方が足りないんだよ。」 「どれだけお高い奴なんだよ、お前は。」  僕は布団から顔を出した。そして僕たちは何も言わずに向き合っていた。 念じた 聞こえた 好きだ 僕も いつから 昔から。 「とりあえずキスしない?」 「どこに?」 「どこでも。」

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