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拍手御礼SS『一生推せる』

わたくしめの古巣であるムーンライトノベルズさんのほうには、拍手ボタンをつけているのですが、そこにアップした御礼SSです。こちらには拍手ボタンをつけられないので、ちょっと短いのですが、こちらにアップさせていただきます。 Twitterのほうで『マッサ推しになって元気にしている若森氏が見たい』というリクエストをいただき、書いてみました! よろしければ、読んでみてやってくださいませ((*pq’v`*)) ˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚˚✧₊⁎⁎⁺˳✧༚✩⑅⋆˚  とある日の会議終わりに、若森は何気なくスマートフォンを開いた。メッセージアプリに通知マークがついている。 「あれ、壱成だ。どうしたのかな」  見れば、壱成からは数枚の写真が送られてきていた。それらを開いてクスロールしながら……若森は刮目した。 「な、なんじゃこりゃああ……!!??」  いつぞや、失恋の傷心を癒してくれたホスト・マッサの写真が送られてきているではないか。若森は思わずスマホを両手持ちして、まじまじと画面を覗き込んだ。  ピザを食べている横顔であるとか、彩人の弟を膝の上に乗せ、ピザを食べさせている姿であるとか、ナンバー1ホストのちょっと怖い人にワインを注いでいるところ、彩人に懐かれて迷惑そうにしている姿などなど…………様々なマッサの姿が写真に収められているのだ。途端にトーク画面がきらびやかなホストクラブへと早変わりしてしまった。眩しさのあまり、若森は思わず「うっ」と呻いてスマホを遠ざけた。 『今、彩人のホスト仲間が遊びに来てんだ。若森も来ない? マッサもいるぞ』というメッセージも入っていて……  ――いっ……いやいやいやいや!! こんなキラッキラしたところに、僕なんかが入り込めるわけないじゃんんん……!! 早瀬いいやつって分かったけどまだちょっとびびっちゃうし、ナンバー1の人も怖いし、小さい子に相手ってどうしたらいいか分かんないし……それに……。  ちら、ともう一度マッサの写真を覗き込む。  若森が到底持ち得ないであろう男らしい華やかさを、思う存分体現したカッコいい男。キリッとした目元も、スッと通った高い鼻梁も、挑発的な笑みを浮かべる口元も、何かもが完璧なまでにカッコいい……。  ――はぁんすごい♡ かっこよすぎる、かっこよすぎて直視できないぃ〜〜!!  あの日、ホストたちの宴に入り込み、このイケメンホストと飲み明かしたこと自体が、まるで夢の中の出来事だったような気がする。日がのぼる頃にお開きとなり、べろべろに酔った矢野とともにタクシーに乗せられた。バタンとドアが閉まった途端、まるで夢から醒めたような気分になったことを覚えている。  マッサも、忍も、彩人、そして宴で出会った若いホストたちは皆、これまで若森が見たことがないくらいキラキラした男たちだった。彩人は同級生だけれど、イケメン度合いが格段にグレードアップしていて驚いた。ああも煌く男たちと、普通に付き合っている壱成にも驚きだ。確かに壱成も爽やかな美形だが、あんな派手な男たちと普通に渡り合えるようになっていたとは……。  ――それにしても、ハァ……♡ かっこいいなぁ。見てるだけで幸せ、一生推せる……。呼んでくれるのは嬉しいけど、こうして画面ごしに見てるくらいがちょうどいいよ僕は……。 『ちょっとまだ仕事残ってるから行けないけど、写真は大歓迎ですありがとうもっと送って』と高速入力し、若森は早速作り上げた『マッサフォルダ』の中に写真を収めた。そして眩しさを堪えつつ器用にうっとりしていると、ぽんと誰かに背中を叩かれる。 「どないしたん若森先生、目ぇ痛いん?」 「はっ…………塔真先生、お疲れ様です……!」  今ようやく気づいたが、会議室のすぐそこで不審な行動に出ていたせいで、教授陣がジロジロと不可解なものを見るような目で若森を見ている。若森は慌ててスマホを胸に抱き、直立して塔真に向きなおった。 「な、なんでもありませんです、はい」 「? そう? ん……何その写真」 「あっ……あ、これ、友人の友人がホストをやってて、その……」 「へぇ〜、ホストの知り合いはいいひんなぁ」  と、塔真は物珍しげにスマホの中を覗き込んでくる。 「へぇ〜おっとこ前やなぁ。俳優さんみたいや」 「そ、そ、そうでしょ!!?? そうなんですよ、カッコよくて!」 「この彼が友達?」 「あ、いえいえそんなおこがましいことで……!!」 「おこがましい?」 「あ、いえそのー。僕にとってはアイドルみたいなものといいますか」 「けど、友達の友達なんやろ? あ、一昔前の会いに行けるアイドルって感じか」 「そうそうそれそれ〜〜そんな感じです! 会うとたぶん緊張して一言も喋れないと思うんですけどね〜」  デレデレしながらそんなことを言う自分、我ながらちょっと気持ち悪いなと若森は思った。が、塔真は清々しい笑顔のまま「へぇ、ええなぁ。楽しそうやん」と言う。  ――確かに、楽しいかも。あんまりアイドルとかハマったことないけど、こんな気持ちなのかなぁ。  マッサがカッコよく健やかに生きていてくれると言うだけで、何故だかものすごく心強いような気がするのだ。壱成から送られてきた写真を眺めていると、自分もカッコよく生きねばという気持ちになる。会えばきっとボロがぼろぼろと出てしまいそうなので腰が引けるが、もっともっと研究成果を出し、出世して、カッコよく生きられるようになったら、マッサとも話ができるような気がする。 「……よし」 「ん? どないしたん?」 「あ、いえ……。あの、塔真先生。来年春の学会発表、僕、やります」 「え、ほんま? 内容まとまらへんから、今回はやめとくて言うてたのに?」 「いえ、なんとしてでも間に合わせます」 「そっか。そういうことなら、俺も出来る限り協力するし、がんばろな!」 「はい!!」  若森が力強く頷くと、塔真も張りのある笑顔を返してくれた。  塔真に研究プランを聞いてもらいながら、若森は背筋を伸ばして大学内を歩くのであった。 おしまい

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