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はじめての巣作り11※

 待ち侘びた熱い杭を突き立てられた時、全身からフェロモンを放出させている自覚があった。  狭い内は愛液で濡れそぼり、潤の性器をギチギチと締め付けていながらもまったく痛みは感じない。  だんだんと拓かれてゆく柔らかな内壁が、これが欲しかったとばかりに喜び勇んで迎え入れるのだ。 「あっ……潤くんっ……潤くん……っ」  思考はゼロになった。  本能から潤を欲する気持ちのみに支配され、中をみっちりと満たされた天はうわ言のように恋人の名を呼び続ける。 「天くん、ずっと僕のこと呼んでる。こんなに深くで繋がってるのにまだ寂しいの?」 「ふぁっ……あぁ……! きもひぃ……っ、潤くん……っ」 「フフッ……。離れないから、そんなにしがみつかないで? 動けないよ?」 「やらぁっ! 潤くん、すぐどっか行くもん……っ」 「行かないよ」 「うそつきーっ」  口元の笑みを絶やさない潤の両肩を、天はパシパシと叩いて不満を顕にした。  痛いよ、と笑う潤はノーダメージなのだが、「うそつき」を小さく呟く天の唇はツンと可愛く尖っている。 「今日も、どっか、行ってた! おれ、行かないれって、言ったのに……っ」 「そうだね。でも学校だよ。僕はまだ高校生だからね?」 「んあぁっ……!」  腰を引いた潤の動きに合わせ、愛液にまみれた性器が限界まで引き抜かれる。秘部がグチュッと卑猥な音を立て、天の嬌声が室内に響いた。  彼は日頃顔を歪めてまで嫌う単語を、自虐を含んだ台詞で天に向けた後、一気に奥を貫いて華奢な体を震わせる。  まるで濃厚なキスを誘うように、尖っていた唇は淫らに開かれ、理性を失くした天の妖艶な姿を見た潤の笑顔はさらに濃くなった。 「あはは……っ、天くん可愛い」 「う、うぅっ……! 潤くん、いじわる、しないれ……」 「意地悪なんてしてないよ」 「おく、いじめないれ……! おなか、きゅってなるんらよっ」 「ふふっ……」  ベッドに両手をついた潤を見上げた天は、「あ、そっち?」と微笑む美丈夫に見惚れていた。  機嫌良く笑われても、天には何のことだか分からない。  潤は腰をグラインドさせ、貫いた最奥のより深くを抉ろうとしてくる。  グジュグジュとかき回され、狭い襞も、潤に拓かれた入口も、巧みな腰使いに合わせて拡がり、ほんのわずかな隙間から愛液がシーツに滴り落ちた。 「ベロどこに行っちゃったの? ちゃんとある?」 「あるよっ! んぁっ……っ」  行為中にどんどんと人格が変わってゆく恋人に、舌っ足らずな天の叱責など届かない。  なおも奥をいじめる潤の微笑は絶えぬまま、天はさらに追い詰められる。 「ほら、天くん。キスする時はどうするんだっけ?」 「ん、っ……! やっ……やぁっ……! 潤くんっ、ちょっと抜いてくれなきゃ……っ! 痛……っ」  彼に教え込まれた通り、天は腕を伸ばして潤の腕を掴む。上体を起こし、背中を屈めた潤との距離が縮まったと思った矢先、下腹部を押さえてシーツに舞い戻った。  奥まで届いた潤の性器が、天の内部をゴリっと擦ったのだ。  思わず涙が滲むほど痛かった。だがそれだけでもなかった。  シーツに沈んだ天の頬を撫でた潤は、手のひらでそのまま白い体躯をなぞり、ヘソ辺りで止める。 「僕の、ここまで入っちゃってるからね。体起こすと痛いよね」 「んっ……んんっ……! わ、分かってるなら……っ」 「おいでおいでって言っても、来れないね?」 「ふ、あぁ……っ」 「これじゃあキス出来ないね?」 「んやっ……っ、やっ……やらっ……! 潤くん、いじわる、してる……っ」  両腕を広げた潤に飛びつきたくとも、貫かれたままでは無理だ。  身長差があるため、通常でもキスをするのが難しいのだから、張り詰めた性器が内に居るともっと体を起こせずもどかしい。  それが分かっていて天の涙を誘う潤は、誰がなんと言おうと意地悪である。 「ごめんね。これは意地悪だったか」 「んっ……!」  小首を傾げた潤の前で、いつまでも膨れていられなかった。もはやどちらが年上か分からないほど、天はあらゆる感情を爆発させている。  お詫びと称し降ってきたキスは、はじめから濃厚なものだった。  潤の舌は天の口腔内で好きに蠢き、どちらのものとも分からない唾液が唇の端からこぼれ落ちるまで続く。 「……どう? キス美味しい?」 「ん、ん、おいひい……潤くん、すき……っ」 「僕も天くんのこと大好きだよ」  束の間の甘い休息は、素直で従順な天の告白によって終わりを見た。  目を細めた潤の瞳の色が変わる。  天の細腰を抱き寄せ、素早いピストンを始めた潤から興奮の香りが漂っていた。 「あっ、あっ……らめ、っ……はやいの、らめ……っ!」 「何言ってるの? 天くんのここは喜んでるよ。……可愛いね。泣きながら揺れてるよ」 「やら……っ、そんなの、……言うなってばぁっ」 「もう少しでイけるね。天くん……僕の締めつけて離さないもん。奥はずーっと温かいし。……気持ちいいんでしょ? 我慢しないでイきな?」 「ふぁっ……! あっ……あっ……!」 「終わったら、いっぱい、抱きしめてあげるからね。天くん、ぎゅーされるの、好きでしょ?」 「うんっ、すきっ……! あっ……いっぱい、ぎゅーして、ほし……っ」 「ふふっ……可愛いなぁ」 「あ、っ……! まって、待っ……また噛む気らっ」  激しく揺さぶられていた天は、甘やかで意地悪な恋人の前でフェロモンを垂れ流していた。  それがα性には覿面だという事は、知識としてしか知らなかった。  気持ちいいと素直に言えば、潤は優しく微笑んでくれる。  〝好き〟と告白すると、必ず潤からもお返しの言葉をくれ、痛いほど抱き締めてくれる。  だがセックスの合間のその相乗効果は凄まじく、天の奥を抉る潤は直ちに性を剥き出しにする。 「潤くんっ……! 待って、……待って……! 潤、くん、痛いのやらぁ……っ」 「我慢して」 「ひっ……! や、やめっ……やぁぁ……っ」  痛がる天を押さえつけ、色の無い声で制止した潤は、やわらかい肩の肉に牙を剥く。躊躇なく歯先を食い込ませ出血させた後、気が済まないのか首輪を噛み切ろうとした。  ちなみにこれは毎回だ。 「痛った……!」 「…………」 「ふぇ……っ、うぅ、っ……いたいよぉ……っ」 「ほんと邪魔だね、この首輪。全然壊れない」 「あっ、あぁぁ……っ!」  滑らかな肌を噛んだ事で、ドクドクと脈打つ性器が天の中で形を変えていた。  理性を失い、うなじを噛めないと悟るや潤はいつもこうして恨み節を吐く。  欲にまみれた低い声に、喉をのけ反らせて喘いだ天は聞き惚れ、自身の絶頂がいつだったのかも分からずうっとりと瞳を閉じた。  大好きな人の長い射精の間、まるであの夢の中にいるような穏やかな気持ちでたちまち眠りにつけそうだけれど、本能に支配された恋人はそれを許さない。 「天くん、目は閉じちゃダメ」 「はぁ、っ……はぁ……っ、んんっ……!」 「今、誰が天くんの中に入ってる?」 「……っ、潤、くん……っ」 「そうだね。ここに入っていいのは僕だけだからね?」  閉じては駄目だと言われたので、天は頑張って薄目を開けていた。  時折息を詰めて欲を吐き出す潤に見惚れてしまうが、射精のため脈打つ性器が襞を悪戯に擦り上げる度、耐え切れずに視界は真っ暗になってしまう。  すると潤は、「僕を見て」とばかりに天を揺り起こし、キスをせがむ。 「ん、んっ……!」 「天くんの中に精子を注いでいいのは、僕だけだよ。他のαの精子欲しがったりしちゃダメなの、分かってるよね?」 「んっ……ふぁっ……! ん……っ!」  眉を潜め、潤は腰を震わせながら切々と天への独占欲を口にする。しかし、普段は微塵も出さない彼の支配欲が、天にはひどく心地良かった。  襞を緩く擦られ、α性特有の長い射精に付き合い恍惚とするも、甘美な想いに縛られた天の意識はすでに朦朧としている。  潤から放たれる芳しい香りが一層濃くなり、いっそフェロモンで全身を包み込まれているような幸福感は、〝他〟ではきっと味わえない。 「天くんは、僕のΩなの。僕だけのΩだよ」 「……潤、くん……っ」  潤の甘い美声が、天の心を潤した。  強い独占欲を目の当たりにすると、Ω性としての存在意義を見出せてとても嬉しくなる。  数分間に及ぶ射精を終えてもなかなか出て行かない潤のことが、愛おしくてたまらなくなる。  セックスの間、まるで二重人格のように人が変わってしまうけれど、それでも天はいつも、いつも、潤に感謝していた。  ──出会ってくれてありがとう。  ……いつか言ってみたいこの台詞を、未だ臆病な天は心の奥深くにしまっている。  性を受け入れる事が出来、さらには心も体も愛してくれる人に出会えた奇跡と幸運は、決して忘れてはならない。  たとえそれが何かの導き─運命─であっても、当たり前だと思っていてはいけない。  我を忘れて噛みたがる潤の前では、まだとても本心を言えやしないけれど。

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