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第49話
ちびの切実な欲求に支配されかけた征一郎だったが、下着の中から取り出した己のものと小さな体との対比を目の当たりにすると、すぐに我に返った。
「(いくらなんでもいきなり突っ込むとかないだろ……しっかりしろ)」
初体験を含む今までの女性との性行為の際、一瞬でも我を忘れて強引なことをしそうになることなどなかったというのに、これはちびの男を惹き付けるという体質のせいなのか、それとも自分で考える以上にこの少年にのめりこんでいるのか。
ちびが征一郎を慕う気持ちが第三者に誘導されたものだったとして、それでもそれが今のちびにとって真実だとするのならば、体質によって惹き寄せられた気持ちも、存在している以上真実といって差し支えないかもしれない。
「(……まあ、面倒臭ぇから、どっちでもいいか)」
今考えるべきは、ちびの腹を満たすことだと征一郎はいらない思考をかき消した。
細い指が拡げて見せているそこは、腹を撫でている間に先走りが滴り落ちたようで多少潤ってはいるものの、だからといっていきなり征一郎のものを呑み込めるほどのキャパシティがあるようには見えない。
スムーズな供給のためにもローションなどを常備しておいた方がいいかもしれないなどと考えながら、指で試すようにそこを探る。
「あ……」
中指を差し込むと、予想に反してずぶずぶと沈んでいく。
そういえば前回も、十分にほぐしたとはいえない状態で挿入したが、傷一つなく呑み込んでいた。
痛みも感じていなかったようだし、やはりそこは人間とは違うのかもしれない。
十分に潤っていない内部は、しかし指の抜き挿しを柔軟に受け入れている。
びくっと体を揺らす場所を丁寧に擦ってやると、きゅっと物欲しそうに内部が締まって、自分のものをそうされる瞬間を思い描き、自然喉が鳴った。
「せいいちろ……っ」
征一郎の邪な想像が伝わってしまったからでもないだろうが、ちびが涙目で振り返る。
「ゆび、じゃ…いや……」
強請られて、ぐっと詰まった。
そもそも、また熱を出すといけないので口から……と思っていたのではなかったか。
だが、逡巡は力なく後ろにのばされる小さな手で霧散した。
「せいいちろうの、そこに、ほしいの…っ」
そこまで言われて、我慢ができるはすもない。
膝立ちになると、折れそうな腰を掴み、反り返ったものをぐっと押し込む。
「あ…あっ、ああっ……」
征一郎の懸念など吹き飛ばすように、小さなそこは歓んで長大なものを呑み込んでいく。
苦痛を感じてはいないだろうかと、前の方に手を回すと硬いものが指に触れて、まったく萎えていないことに安堵した。
「あ…おくまで……入っ……」
声音からも苦痛は感じられず、やや性急に腰を使い始める。
「あっ!や、あ、あっ!」
ともすれば力が抜けてしまいそうなほど、ちびの中は気持ちがよかった。
征一郎のために誂えたような締め付けを堪能していると、ちびが懸命に振り返り強請ってくる。
「せ……いちろ……あ、やっ、も……欲し……」
煽るなと咎めるように強く突けば、高い声で啼いてシーツに沈んだ。
だが本能を抑えきれないのか、欲望に支配された瞳が再びこちらを射抜く。
「征一郎の、なかにいっぱいほしい…っ」
ドクンと全身が脈打った。
腰を掴みなおし乱暴なくらいに小さな体を揺さぶれば、ちびは声もなくのけぞり、シーツには白濁が散る。
搾り取る動きで締め付けられて、征一郎も素直に欲望を吐き出した。
二度、三度と下腹部を震わせ全てを注ぎ込むと、ちびからは満足そうな吐息が漏れる。
「……ふぁ……いっぱい……」
それを聞き、征一郎は苦笑してしまいながらも、何か満ち足りたような気分で息を吐き出した。
征一郎は軽く息を整えると、未だ痙攣を繰り返す場所から、ともすればその刺激により再び復活しそうな己のものを引き抜いた。
呑み込み切れずに一筋こぼれた精液を掬い、体をひっくり返すと汚れている場所を軽く拭いてやる。
「平気か?」
「ん……っだい…じょうぶ……」
「また熱が出ねえといいんだが…」
煽られて、うっかり挿入したまま中に出してしまった。
自分の自制心のなさには少し呆れる。
「征一郎…おれね…」
「ん?」
うとうとと意識を飛ばしかけているちびが、何かを言いかけているのに耳を近づけた。
「樋口さんには…負けないからね…」
征一郎の脳がその言葉を認識する前に、ホムンクルスの少年はすうっと眠りに落ちていく。
一瞬遅れて、征一郎は目を剥いた。
「は?なんだそりゃ昼間あいつと何かあったのか!?おいちび!?」
昼間。
樋口が去った後、ちびは月華に樋口とはどういう人物かと聞いた。
征一郎のことを(倒す相手として)とても意識しているという情報を得たちびは、同じ人物を意識する者として勝手に樋口をライバル認定していたのだが、もちろん、征一郎はそのことを知らない。
満腹になったちびは、一体何の話なのかと焦って呼び続ける征一郎の声にも気づかず、幸福そうな顔で眠るばかりだった。
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