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第4話

 会社の会議中、机の上の携帯が激しく揺れて音を立てた。ちらりと画面を見ると栗原からだった。後からかけ直せばいいか、と放っておく。  社員の報告を聞きながら、ふと陸の顔が浮かんだ。あれから数週間経っていた。栗原に探してみるとは言ったものの、もともと大した手がかりもないので、どうしたものかと手をあぐねていた。  携帯は相変わらず電源も入らず繋がらない状態だった。陸はクレジットカードも持ってなかったし、銀行口座も持っていなかったので、その使用履歴などからは足取りは掴めない。生活費はいつも哲也から現金を渡していた。哲也のクレジットカードを渡してもよかったのだが、陸が嫌がった。  なので、陸はいつも哲也から渡された1ヶ月の生活費からやりくりして家事全般をこなしていた。家を出て行ったあの日もいくらか持ってはいたと思うが、月末近かったし、そこまで大金を所持していたとは思えない。ともすれば、やはり滞在先はこの東京近郊に思えた。  哲也は陸とよく出かけた公園や、本屋など、時間のあるときに何度も回った。陸のいた養護施設も訪ねてみた。しかし、何の手がかりも見つけられなかった。  もう1つ思い当たったのは陸がバイトをしていた料亭だった。そこは哲也の行きつけだったところで、料理人を探していると聞いて、そこの女将も料理長もとてもよい人だったのもあり、哲也が陸を紹介したのだ。 陸は、正社員として働いてもいいぐらいの腕前だったので、そんな話もあったのだが、陸が断った。家事をおろそかにしたくないという理由だった。  陸が出て行ってすぐ、哲也は料亭にも問い合わせをしていた。しかし、出て行った日から陸はバイト先には顔を出していなかった。予想はしていたが、もしかしたらと期待していたのもあったので、正直落胆はした。 女将も料理長も陸の身の上は知っているので、陸が迷惑をかけたにも関わらずとても心配してくれた。何かあったら哲也に連絡をくれることになっているが、今日まで何も情報はない。  自分1人の力ではどうしようもないと思えた。なので、プロの手を借りようかと考え始めたところだった。  

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