1 / 67

第一章 目覚めた恐怖

 白川 瑞樹(しらかわ みずき)は、15歳。  今年、父の勧める高校へ進学した。 「瑞樹、お前は柔道部に入るんだ」 「ぼ、僕が!?」  中学生の頃は園芸委員会で、花や木を育てていた。  格闘技なんて、やったことがない。  しかし、だからこそだ、と父は言う。 「お前はΩだということに、胡坐をかいている。辛いこと、きつい事から逃げてばかりだ」 (園芸委員会、結構力仕事も多かったんだけどな)  それに、辛いことだってあった。  瑞樹は、草むしりが苦手だった。  雑草と言うだけで、抜かれてしまう野の草。  彼らだって、ちゃんと名前があり、花を咲かせ、実を結ぶのに。  心優しい瑞樹には、花壇の花のためとはいえ他の命を摘み取ることが苦痛だったのだ。 「とにかく、柔道部で心も体も鍛えなおせ! その弛んだ精神を、ピンと伸ばせ!」 (ひどいよ、父さん)  しかし、αの父に何を言っても無駄だ。  Ωの苦労など、伝わらないだろう。  そんなわけで、瑞樹は嫌々ながら柔道部に入部した。

ともだちにシェアしよう!