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「翔希」  名を呼びながら伸ばされた手を払う。  声の主はむっとしたのか、僅かに唇をひん曲げてこちらをじとりと見遣った。 「そんな顔するなよ。しょうがないだろ、明日から出張なんだから」  たかが一週間の出張。  されど一週間の出張。  そう言いたいとばかりの顔で章はのそりとベッドに横になっているオレの上に覆い被さってくる。 「無理だって」 「翔希はしたくありませんか?」 「……」  返す言葉を飲み込む。  本音を言えば章といつまでも、お互いの境目が分からなくなるほどに交わり合いたいと思う。  けれどそれだけで過ごしていけないのが社会人だ。 「貴方と離れている間の為に、思い出が欲しい」  手を取られ、ちゅっとリップ音を響かせながら口付けされれば、ぞくりと腰に熱いものが走る。 「……っ、離れるって……一週間だけだし、今までのことだって……」  ちらりと視線を携帯電話にやる。  そこには章のリクエストで撮った幾枚かの、所謂「ハメ撮り」と言う奴が入っているはずだ。 「あれはあれ、これはこれ」  何の屁理屈だ……と声を上げる前に、章はちゅっちゅっと啄むキスを繰り返してくる。  くすぐったいようなその感触が重なり、身を捩って逃げようとする力が削られていく。 「んっ  ん」 「翔希」  普段の声よりやや低い、最中に囁く声で呼ばれてしまえばもう白旗を振る道しかオレには残されてはいない。 「大丈夫。一回の出し入れだけに留めますから」  長時間の移動を考えれば、それくらいなら妥協できる。 「 や、約束だから な?一回だけな?」 「はい。一回入れて出すだけで」  うん?と思った瞬間、手が章の顔面を鷲掴んでた。 「あ゛ぁ?」 「………………」  オレに伸ばされた手がわきわきと宙を掻き、熱っぽく見つめていた目が泳ぐ。 「一回……だよな?」 「抜き差しだけは」  往生際の悪い一言だ。  以前に一度も抜かない状態で意識が飛ぶまで責められたことを思い出しながら章を睨みつけると、再び熱っぽい目がこちらを見ているのに気が付いた。  オレは明日、出張に行けるんだろうか……? END.

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