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侑紀は目の前でぷらんぷらんと揺れるものに合わせるように視線を揺らした。
「だーかーらー」
弟の汰紀にはそれがどうやらふざけているように見えたらしい、ちょっとイラっとした態度で足を踏み鳴らす。
そうすればますますそのぷらぷらとするものの動きが激しくなり、侑紀の視線も動くのだとは……気づかない。
「シックスナインしようよー今日、6月9日だし」
「いや、おれ曜日感覚ねぇし」
「燃えるゴミの日だから火曜だよ」
座敷牢にいる自分には何にも役に立たない知識だと、侑紀は呻くように言ってから溜め息をついた。
投げ出した足の間に、汰紀がぷらぷらさせているのと同じものが見える。
当然だが、コチラは揺れない。
「年に、一度の、chance!」
「そこだけ発音いいの腹立つ」
兄弟で一糸纏わず、シックスナインの体位をするかしないかで言い争っていたが、冷静になればすこぶるどうでもいいことで……あほらしすぎて汰紀の熱弁に揺れる股間に視線が行くのも仕方がない。
「いいよもー何度もやったし、そこまで楽しいわけじゃないし」
「でも!6月9日にする、シックスナインは、今日だけだよ!」
「じゃあ来年でいいだろ」
「そうじゃないってぇ!!」
要求を飲まずにぞんざいにスルーした時に出る地団駄に、侑紀は苦く笑うしかない。
「いや、もう、そんな雰囲気じゃなくね?」
一人は仁王立ちしてぷらぷらだし、一人は床に転がって尻をかいてるし、ムードは一切ない。
「それを、どうにかするのが、シックスナインじゃ、ないかな?って思う!」
「語尾強めたからどうなるってもんでもないぞー」
「なんとか、なりそうな、気が、しないでもない気がする!」
ならんだろうと言ったところで、この頭のネジの跳んだ弟は聞く気がないんだろうと、お兄ちゃんの性分で侑紀はごろりと大の字になった。
天井の極彩色の絵は相変わらずまぶしくて、ぎゅうっと眉間に皺が寄る。
「ヤリたけりゃその気にさせてみろ」
挑発的に言ってやれば昏い笑みが口元に浮かぶ。
「ヤリたいからナニやってもいいんだよね?」
背後に隠されていた道具のスイッチが入り、ぶぅん……と小さなモーター音が響く。
「じゃあ、遊ぼうか、お兄ちゃん」
舌が、震え続ける先端を舐め上げる。
絡みついた唾液が、極彩色の光を反射して鈍く光った。
END.
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