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第1話

 好きなんて言えるはずもない。  友達なら近くにいられるし。  でも。女の子に取られるのはツライ。  こっちの気持ちなんか知らないくせに。  何げなく、肩に回された腕だけで切なくなる気持ちなんて。  ・・・でも言えない  一年の時から好きだったなんて言えない。  男同士で、ずっと友達だったんだ。  いつも一緒にいたからこそ。  好きな人とかいるの?  と聞いたら、いるって笑われた。  誰って聞いたら「教えない」って。  それくらい教えてくれたらいいのに。  そう思った。  誰かわかったなら、二人がどうなるのかを見極めて、上手くいきそうなら、そっと離れていくのに。  お前は?と聞かれて、いる、と答えた。  誰って聞いてはくれなかった。  聞いても答えられないけれど。  お前だよ。    その言葉はしまう。  いっぱい見ておく。  その笑顔を。  そしてたくさん一緒に笑っておく。  卒業したら、自分と同じ人を見つけて、ちゃんと付き合う恋をする。  思うだけの恋はこれが最後。  だから大切な恋にする。  大切な大切な。  こんな風にはもう誰も好きにならない。  だってこれは、初めての恋だったから。    もう終わるけれど。  卒業するまではせめて、誰かと一緒にならないでくれ。  そんなことを願ってしまうけれど。  それくらいは、願ってもいいだろ。  あと数ヶ月なんだから。  気さくに肩を抱かれる。  帰りも一緒に帰る。  休みの日も過ごせる時は一緒にすごす。  友達でいれるのはどれくらい?  同性の友達だけで過ごしていられる時間はあとどれくらい?。  一緒にいると嬉しくて、楽しくて、でも夜に泣く。  もうすぐ終わる。  アイツを女の子達が狙っているのもわかってる。  そしてアイツには好きな子がいる。  好きな子が。  家族がいないから泊まりにこい、と言われて喜んで行った。  少しでも一緒にいたい。  ゲームして、映画みて、ピザ食べて、バカみたいに笑った。  アイツのお父さんの酒のんで、もつれ合うように床で寝ていた。  ふと目を覚ましたら、アイツが抱きしめてきた。    寝ぼけているのだ。  そう思った。  でも寝ぼけたふりしてそのままにした。ドキドキして嬉しくて泣いた。  この腕に抱きしめられて、眠ることなんて、諦めていたから。  声を殺して泣いて朝がきた。  アイツは目が腫れてるぞ、と言った。  悲しい夢をみたんだと笑ったら、何か言いかけてアイツはやめた。  もうすぐ卒業なんだ、って今更気付いた。  そしてそのうち教える、と言ったまま卒業した後、ひとり住む住所はアイツに教えないままになった。  卒業式にはもう気持ちはスッキリしていた。  初恋の終わり。  明日から大学の近くの新しい住所に住むことになってた。  理由を色々つけて親は説得している。  アイツには教えてない。  アイツは地元の専門学校に行く。  これで、やっと終われる。  胸が痛んだ。アイツの好きな子はわからないままだった。  それで良かった、そう思った。  式が終わり、クラスの皆が集まってさわぐことになっていた。  だけど用事があるんだ、と断った。     本当は何もない。  明日を待つだけ。  アイツに笑って「またな」と言った。  走って帰る。  さよなら。  心で言って。  走った。  ひたすら走った。  でも泣かなかった。  家の前で思い切り何かを頭に投げつけられた。  ビックリして振り返ればアイツがいた。  なげられたのは鞄だった。  「待てって言ったのに!!」  息を切らして、ずっと走っておいかけてきたのだと知った。  「何?」  そこまでして?  驚いた。  「言いたいことがあったんだよ!!」  怒鳴られた。  そして、手をつかんで連れていかれた  引きずるように。  その権幕に困惑した。  人気のない場所に来たと思ったら「逃がさない」そう言われて、抱きしめられた。  「逃げるつもりだっただろ」  その腕は強かった。  「前にこうした時泣かれたから、そういう気がないことはわかってる。離れていこうとしていたのもわかってる。俺が怖かったか?でも嫌なら何もしないから・・・友達でいいから・・・逃げないでくれ」  泣いたのはアイツだった。    「離れたくないんだ、恋人にしてくれなんて言わないから・・・ずっと友達でいいんだ」  震える声にこちらも震えた。  「好きな人って、おれ?」  そうとだけ聞いた。  「好きなだけでいいんだ・・・」  小さな声が言った。  消えそうな声。  「おれの、おれの好きな人はね・・・」  震える声で名前を言った END

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