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第七章 組長の秘密
「先生、正月まで大翔さんの勉強を見てくださって、本当にありがとうございます」
「いいえ、大事な受験生ですから。帰省先も、ありませんし」
征生と楓は、1月2日の車の中、そんな会話を交わしていた。
「難波さんは、帰省されないんですか? お正月休みはあるとお聞きしましたが」
「私の家は組ですし、私の父は、組長ですから」
この征生の言葉を、楓はこの時ほんのたとえ話だと思っていた。
組に、組長に忠義な組員のものだと思っていた。
「さっき、帰省先が無い、って言ったな、楓。どういう意味だ?」
「マンションに入ると、途端に口調が変わるんだから」
くすくす笑いながら、二人はキスをした。
恋人同士の、甘いキス。
その合間に、楓は身の上を簡単に話していた。
「僕、父子家庭で育って。小学5年生の頃から、施設に入ったんです」
「親父さんは?」
「知らない。もう、連絡も来ないし」
そこまでで、楓は床に膝をついてしまった。
「はぁ、はぁ……。もう、ダメ……」
「キスでのぼせるなんて、相変わらずウブだな」
そのウブなはずの楓が、手早く征生の前をはだけてペニスを掴み出している。
「こいつは春から縁起がいいな」
「もう、馬鹿っ」
ちゅぷ、と楓は征生を咥えた。
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