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エピローグ
晴れ渡る青空の下でも、そこだけは異様な空気を滲ませて佇んでいる。
鐘崎はすっかり馴染んでしまった店内に入り込むと、真っ直ぐに奥へ進んで行った。
「おや、鐘崎様。いらっしゃいませ」
店主は何やら店の中を整理していたようで、手に箒と塵取りを持っている。埃にまみれた空間から顔を上げると、口だけを覗かせて笑った。
「聞きたいことがあるんだが」
「何でしょう。なかなかあなた様に合うゴーストはいないみたいですしね」
店主は掃除道具を脇にどけて、鐘崎に向き直る。
そのフードの下を、何度覗いてみたいと思ったか分からない。鐘崎がそれを振り返りながら、店主にずっと言ってみたかった頼み事。それは。
「お前をレンタル……いや、生き返らせるにはどうしたらいい。不可能ではないのだろう」
「……何ですか、鐘崎様。ご存じでしょう。私はそんな対象にはなれません。立場があるのですよ」
「羽山に立場を譲った後でいいんだ、頼む。俺はずっとどこかで気付いていたんだ。お前ははぐらかすけど、間違いなくお前は、生前は俺の大切な恋人だった。そうだろう」
「鐘崎様……」
店主は今度ばかりは誤魔化しを言わなかった。言おうとしたところで、鐘崎はどんな方法を使ってでも言わせないつもりだ。
鐘崎が店主を腕の中に閉じ込める。すると店主は鐘崎に腕を回すと、体を小刻みに震わせた。 笑っているのではない。泣いているのだ。
抵抗されないかどうか確かめながら、そのフードをゆっくりと外した鐘崎は、店主の頬に光る涙を見つめて、手を伸ばす。
「……ーー」
空気に溶けてしまいそうな透明な声で、鐘崎は店主の名前を呼んだ。
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