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第1話
恋人が今、まさに浮気している。
内緒で訪れた恋人のアパート、玄関に見知らぬ女物の靴があったから嫌な予感はしてたんだけど。そっと寝室のドアを数センチ開けると、恋人の上に髪の長い女が跨がり、耳障りなあえぎ声をあげながら腰を振っていた。
女になんか興味ないって、僕じゃないと反応しないって言ってたのに。
今すぐ乗り込んで2人を引き剥がしたいのに、その場から1歩も動くことができなかった。女の尻が上がるたびにチラチラと見える恋人のモノから目がはなせない。
気づけば僕は、痛いほどにはりつめた自分のを取り出して夢中でしごいていた。物足りなくて後ろにも指を入れて、そこで、焼けつくような熱い視線にはっと前を向いた。
恋人が、僕を見ていた。
「っ……」
浮気現場を見てしまった絶望とそれを見て自慰をしているところを見られてしまった羞恥と、ごちゃごちゃになった思考のまま、それでも手は止まらない。
絶頂が近づき前も後ろも手を速める。追いかけるように女の声も大きくなった。それまでただ女の身体を支えているだけだった恋人が、まるで僕の手に合わせるように下から腰をうちつけていて。
一気に駆け巡った興奮のまま、僕はドアの隙間から寝室の床にぶちまけた。同時に恋人も達したらしい。大きく痙攣した女がどさりと恋人の上に倒れる。
僕と恋人の目は合ったまま。荒い呼吸をしながら、恋人は恍惚の表情で僕に微笑んだ。
『すごく、良かった』
唇の動きだけで告げられた言葉に今まで感じたことがない痺れを感じながら『僕も』と答えた。
この日から僕達の行為は『こう』なった。恋人は適当な子を誘い、家で行為に及ぶ。必ず相手が上だ。そして僕はその光景をドアの隙間からのぞき見て自慰をする。僕の絶頂が近づくと恋人も合わせて腰を動かし、僕達は同時に果てる。
今まで恋人とした何よりも気持ちよくて、興奮して、幸せな時間だった。見知らぬ誰かが恋人に触れているのはものすごく嫌だけど、それさえも行為のスパイスだ。だって恋人は、ずっと僕しか見ていないんだから。
終わったあと、恋人はいつも僕を見て『愛してるよ』と微笑んでくれる。
僕も恋人を見つめて『愛してるよ』と返すんだ。
おわり
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