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火芯【完】

なぁ、お前達はなにをした? クク……なにが救済だ。 お前達の教えが人を救った事があるか? 一人でも たった一つの命でも! 「教えてやろう」 貴様の文字は無意味だ。 先達(せんだつ)を敬え? 敬服したところで、なにが起こった。 「戦乱だ」 五百有余年…… 中華の国土は荒廃し、大地はあまたの命を吸った。 大地は、人の…… 「血をすすったァァァッ!!」 それでも尚、お前達はッ 「己があやまちを認めず、尚、先達の教えを良しとし、己が正義に驕るかァッ」 忌まわしき教えから派生した教えが、乱世をつくり、戦国の世を惑わしたのだ。 お前達の教えが人を惑わした。 合従(がっしょう)連衡(れんごう) 実に愉快じゃないか? 崇められるものは、時流により変わる。 クク…… ククク、クク…… フハハハハアァァーッ 正義を騙る者どもよ、 (お前達は悪に堕ちる) 世を惑わす悪として…… 「地に堕ちよ!!」 オオォォォオオオーッ 地を震わす。 それは悲鳴か、慟哭か。 この大地の血肉となれ。大地が吸う血肉はお前達で最後にしよう。 約定は、せめてもの情けだ…… さようなら、愚者ども 高みから見下ろす。大地を。血に染まる大地に、人を植える。 悪しき思考の芽を摘んだだけだよ、俺は。時代が間違う事は、もうあるまい。 (俺が正しいとは、思わないさ) いずれ俺も土に還る。 お前達となにも変わらない。 (だが、まだ先だ) 生きて、生きて、生きた先に、この先の未来の『生』を俺は見つめる。 「殺せェェェェーッ!!」 大火が空を焼く。 お前達、儒学者の生きた証はこの中華の未来には要らぬ。 (只の害だよ) 書を燃やせ。灰に帰せ。 塵芥(ちりあくた)となり、空に還れ。風よ、巻き上げろ。中華の大地から、一切よ、去れ。 「全員」 風が唇を切った。 「拱手(こうしゅ)!」 ザッ 数千の家臣が地に跪く。 大地に染み込んだ血に、命に。 拳を包み、(こうべ)を垂れる。 「陛下」 側近が一杯の盃を差し出した。 注いだ雫が落ちて、大地を黒く染めた。 楊洸(ヨウ コウ)。 お前の父は地面の下に埋められたのだな。たった今、我が命により…… (この水は) 猛毒 不老不死の仙人薬とは名ばかりの水銀だ。 「構わぬ」 鼓膜の傍で盃の割れる音が囀ずった。 一気に飲み干した唇で、お前の唇を吸う。 口の()から零れた(くれなゐ)…… 「我が血は美味いか」 【了】

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