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第13話

 あれからリョウさんは本当に僕の半身かのようにくっついて離れない。会社に行く時は身を切られるように顔を歪めて玄関に立つ。  そんなリョウさんを笑顔とキスで送り出し、僕の一日は始まる。  結婚式の話は特別進んではいないけれど、目下僕の気がかりは他にある。 「好き、って言ってないんだよな……」  それを言うと友人は酷く驚いていた。結婚を前提に同棲していて指輪まで受け取っているのに好きだと言ったことがないなんて、と。  だけど始まりからして気楽に寝られるというだけの関係だったのだ。僕からリョウさんにねだれるのはセックスくらいで、それ以上を願うことをしてこなかった。  好きだなんて言ったら関係が変わりそうで言えなかった。 「どうしよう」  構えれば構えるだけ言いだし辛くなる。なら睦みあう最中にとも思ったが、すぐにぐずぐずになるせいでそれも上手くいかない。  だから僕は彼のいない部屋で何度も練習を繰り返す。 「リョウさん大好き。リョウさん大好き……」                           了

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