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「華々しく、毒③-コウと恭一② second sequence」

「コウと恭一② second sequence」  sequence 連続 続発 連鎖 結果 続き  高校の時、恭一は顔はいいんだけど面白くないんだよな、と言われた。そいつは深い意味で言ったんじゃないと思うけど、俺はかなり深く傷ついた。それから、誰かと話すことが怖くなって、顔のいい寡黙なやつ、になった。  美容師になってから、話すことも仕事だから、いつまでも寡黙なやつでいるわけにはいかなくて、自分なりにいろいろ考えて、最初の一言、を言うようにした。後は相槌を打つだけ。俺の客は、9割女の子だったから、女の子が一方的に話し続けて俺が相槌を打つ、時々鏡越しに笑う、それで十分だった。  女の子とつきあいもしたし、同棲もした。女の子の方から一方的に好きと言われて、つきあい始めると、大概俺が振られる結果になる。恭一くんって、本当に話さないんだね、何考えてるかわからない、と一方的に怒り出して別れを告げられる。話さないんじゃなくて、話せないんだよ、俺は面白くないやつなんだよ。  コウさんの家に居候し始めたころ、俺は本当に嫌だった。どこに行くにもついてきて、一人になる時間がなかった。  コウさんと俺はほとんど話さない。時々コウさんが話しかけて俺が返事する、程度だ。本来俺は人と話すことは嫌いじゃない。ただ、人の好きそうな話、面白い話ができないだけだ。  しんとした食卓に限界を感じた俺は、コウさんに嫌われてもいいし、なんなら面白くないやつと家を追い出してほしかったし、とにかく自分の思うままに話し続けた。コウさんは、へーとかふーんとか言ってたけど、俺に対して面白くないとか、黙れよとか、言わなかった。  俺が「俺の話面白くないでしょ、つまらないならそう言ってください」と言ったら、コウさんは「面白くないとか面白いとか考えたことないよ」と答えた。そして、「面白いこと、まあ、聞いてる分にはその方がいいのかもしれないけど、別に面白いことを言わせるためにお前置いてるわけじゃないし」と言って俺の目を見て、「好きなことを話せば」と言った。俺は調子に乗って自分の思うままに毎日話し続けた。コウさんは何も文句は言わない。美容師だから、人の話を聞くことには慣れているのかもしれない。  俺はコウさんとの生活が楽しくなってきた。俺がくだらない番組見てても、何もいわない。美容師は流行のドラマとか映画とか知っとく必要があるから、よく二人で映画見たりドラマ見たりするけど、俺がくだらない自分勝手な評価を話し続けてもコウさんはずっと聞いている。俺がコウさんの意見を聞こうとすると、俺の意見と正反対の感想を述べても、それが俺に対する批判に聞こえず、俺の考えを尊重しながら、うまく自分のことを話す。    二人で夜中に録画してたドラマを見てたとき、俺はあまりのくだらなさに寝落ちしてしまった。ふと目を覚ますと、コウさんの膝枕で俺は寝ていたのだが、コウさんは画面を見ながら俺の髪を撫ででいた。それが俺は嫌じゃなくて、全然嫌じゃなくて、心の中でわーっとか、えーっとか叫びながら寝たふりを続けていた。時々薄目を開けてコウさんの顔を見たのだが、コウさんはなんというか、清潔感のある整った顔をしていることに気付いた。  店の備品のお使いの途中で、以前いた店舗の同僚にあった。そいつから初めてコウさんがゲイと聞かされた。「お前もう食われてんじゃないの」と言われ、俺は「全然食われてねぇよ」と叫んでいた。同僚に「そこまで怒らなくても。あの人ゲイだけど悪い人じゃないし」と言われて、そんなん、知ってる、お前に言われなくてもわかってる、と俺は心の中で叫んだ。  その日の夜、俺はコウさんに「ゲイですか」と聞き、コウさんは「そうだよ」と平然と答え、俺は腹が立つわけだが、なんで俺は腹が立つのか、それがわからなかった。俺はひどく混乱して、何も話すことができなかった。  その日の晩、俺は自分のいら立ちの原因を探るべく、寝ているコウさんの部屋に忍び込んだ。寝ているコウさんを見ていて、わけもなく幸せを感じた。一人じゃない、誰かのいる生活。俺は愛が何か、わからない。カッコつけてんじゃない、愛の真意がわからない。ただ、今の俺の気持は、愛に核があるのならば、その近くまで行っているような、そんな感じだ。ベッドから出ているコウさんの手を握ってみた。頬に近づけてみた。暖かかくて、コウさんがここにいて、俺の近くにいて、生きていて、本当に良かったと思った。  俺は何度も深夜のコウさんの寝顔を見に行った。俺は、コウさんがゲイと知ってから、ゲイの何たるかをいろいろと自分なりに学習したが、正直なところ、今まで女の子としか関係のなかった俺にはまったく理解できない。だから俺は考えた、もし、夜中に自分の家に泊めた男が寝ている自分の傍に居たら、もうそれってすること一つじゃねぇの、と。だから、俺的にはコウさんが俺に手を出してくれたら、それでうまくいくと考えたのだ。そういう関係になったら、俺は堂々とここで、コウさんの隣にいることができるのだ。俺から手を出せばよいのだが、どうしていいのか、わからない、これが本音だ。しかし、俺の計画は全く前進しなかった。  俺はある日、平然と飯食ってるコウさんに「俺ってコウさんの何なんだよ」と言ってしまった。コウさんは明らかに動揺していたが、はっきりと俺を拒絶した。俺は辛くて悲しくてもうここにいる理由もないと思い込んで「帰る」と言った。どこに帰るのか、また適当に女の子に家に泊めてもらうのか、それはできない。コウさんは泣く俺の背中をポンポンと叩きながら「いいから、飯食えって」と言い続けた。俺はここにいていいの、俺、コウさんにとって必要なの、と心の中でぐるぐると考えが回ったけど、これ以上、俺は何も言えず、コウさんも何も言わなかった。  その日の晩、コウさんと二人で古い映画を見た。でも、俺の頭に全く内容は入ってこなかった。俺は横になってコウさんの膝に頭を置いた。コウさんはいきなりの俺の行動にちょっと驚いたようだが、ふふっと笑っていつもみたいに俺の髪を撫で始めた。  俺は愛の何たるかがわからない、愛の真意がわからない。だから、今の俺の気持が何なのかもわからないけど、コウさんの膝枕に寝ていいのは俺だけだし、コウさんが客以外で髪を触るのは俺だけで、俺以外の人間に触ることは絶対に阻止するし、つまり、コウさんを誰にも渡すつもりはないし、と、無敵の女子高生のような気持になっていた。

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