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1 始まりの記憶

 世間一般では、Ωが一番弱者で、被害を受けやすいように考えられているが、実はそうとも言えない。  αは成長すれば最も力を持つが、その有り余る美貌でΩのフェロモンと同等かそれ以上に他者を惹きつけてしまう。そのため、強者であるはずのαは子供のうちは注意しなければならない。性的被害に遭いやすいからだ。  そして、京もまた中学校に上がって体が出来上がるまでは何度も被害に遭ってきた。痴漢やそれ目的の誘拐などざらで、大人にいいように触られるうちに感覚が麻痺した。  こういう被害に遭う人間は、性に対する嫌悪感を増長させてトラウマになるか、または逆に性に対して奔放になり、快楽ばかり求めるようになるかの両極端な末路が待っている。そして、京の場合はどちらかと言えば後者だった。  初めて被害に遭ったのは7歳の時で、デパートで母親とはぐれた時に見知らぬ中年の男が近づいてきて、声をかけられた。 「君、お母さんとはぐれちゃったの?おじさんが一緒に探してあげようか」  親切そうな顔立ちと声に騙され、京は素直にその男と手を繋ぎ、連れられるままにデパートを出た。迷いなく進む足取りに初めて違和感を覚え、男に聞くことにする。 「おじさん、ママがどこにいるか知ってるの?」 「うん、おいで。駐車場の所にいたはすだから」 「うん」  男はどこまでも優しい態度を崩さないので、京も違和感は気のせいだったのかと思い、頷いていた。  しかし、そのまま男が母親の車ではない真っ黒な車に京を連れ込み、服を脱がそうとしてきた時にはさすがに危険を感じて暴れた。 「やっ、いやっ……」 「こら、暴れるな」  男はいとも簡単に暴れる京を抑え込み、背中で両腕に手錠をかけ、あぐらをかいた状態にさせて足首に縄をかけ、動けなくした。口はかろうじて塞がれなかったが、大声を出しても周りに聞かれないようにか音楽を流される。  そして、暗くカーテンの引かれた車内で、一方的な陵辱が幕を開けた。  男はまず、泣き叫ぶ京の口にキスをし、必死で固く引き結ぶ口をこじ開け、中に分厚く滑った舌を潜り込ませてきた。 「ん、んぐ……んん……」  口の中を丹念に隅々まで這い回る舌は歯の裏側や上顎を擽ってきて、気持ちの悪さとは別にくすぐったくて妙な気持ちになった。  溢れ出した唾液がつうっと顎を伝ってぼたぼたと服に落ちた時、その後を追いかけるように男の指が胸元に触れ、揉むように動く。しかし当然ながら女のような膨らみはないため、男の意図が分からずに身じろぎする。 「どこにあるのか分からないな……」  そう呟いたかと思うと、男は大きな手をシャツの中へ入れてきて、直に肌を弄《まさぐ》った。それが父親が時々する擽《くすぐ》り攻撃に似ていたので、思わず状況を忘れて笑いそうになったのだが、やがて胸の尖りを探り当てられてびくりとした。  その時はまだそこに触れられることにどんな意味があるのか分からなかったが、男が乳首を撫で回したり引っ張ったり突いたりとしつこく弄ってくるうちに、奇妙な感覚が湧いてきて声が溢れる。 「あっ、いやぁ……っ」  女の子のように高い声に男はごくりと喉を鳴らし、服をたくし上げると胸に顔を埋めて乳首を口に含んだ。 「やっ……ぁあっ……やん……っ」  ぷくりと膨らんだ乳首をころころと舌で転がしたり、柔らかく吸い付いたり甘噛みされたりするうちに、つきんと股の間の小さなペニスが立ち上がってくるのを感じて。それが気持ちのいいことだとは分からなかったが、いつの間にか嫌悪感はどこかにいっていて、男に翻弄されていく。 「ひぁっ……」  息を乱した男が京のズボンをずりおろし、夢中で小さなペニスにむしゃぶりついてきた時、目も眩むような強烈な刺激に勝手に腰が跳ねた。 「やっ……やぁあ」  ぴちゃぴちゃと舐め、転がされ、上下に顔を動かしながら食い尽くすような勢いでペニスを弄ばれ、腰を這い上がる尿意のような奇妙な疼きに身悶えする。しかし、まだ僅か7歳の京に精通などあるわけがなく、ただただその感覚を持て余すばかりだった。  気が遠くなるほどしゃぶられた後、男は京の体を持ち上げてズボンを太腿まで脱がせると、シートを倒してうつぶせにさせた。  そして小さな双丘を割り開き、孔をじっくりと眺めてきたかと思うと、何か冷たいぬるぬるとした液体を塗りつけながら指を押し込んでくる。 「ひっ……ッ……ぅ、うう……」  液体のお陰か痛みは思ったよりもないが、異物感に気持ちの悪さがこみ上げて、再びどっと恐怖や不安に支配されて涙を零す。  ぬち、ぬち、と指を中に出し入れさせながら、男は荒く息を乱して話しかけてくる。 「大丈夫大丈夫、怖くないよ。すぐにこの液体で気持ち良くなるからね」 「っ……や、……ぁん……」  男の言葉通り、次第に腰からむずむずと這い上がるなんとも言えない感覚に侵されてきて、気が付けば熱に浮かされたように腰を揺らしていた。 「ぁん……ぁっ……もっと……」  口から溢れる言葉が信じられないほど濡れていて、同時に男を誘うように孔がひくひくと蠢くのを感じた。 「挿れるよ?」 「うん……」  男が何を挿れると言ったのかは分かっていなかった。ただもっと強烈な刺激を求める余り、こくこくと頷いた。  そして、男が指を引き抜き、代わりにもっと太くて熱いものを押し当てられて、期待に息を呑んでいた時。こんこんと車の窓をノックするような音が響いた。  男は忌々しそうに舌打ちしながら京から身を離し、上着を被せて隠すようにしながら運転席に回り、窓を開ける。  上着の隙間から覗くと、窓の外には警察と京の母親が立っていた。 「ママ!」  男と警察が何やら話をしているが、内容は難しくて分からない。それよりも母親の顔を見て安堵して呼んだ。 「京!ああ、なんてことを……」  衣類を整えて母に抱き上げられながら、警察に取り押さえられる男を見た。男は悔しそうにしながら、最後まで京を熱っぽく見つめていた。  その後男は捕まり、事件は収束へ向かったのだが、それ以来京の体は疼くようになった。やがて学年も上がり、体の成長と共に周りよりも早々と自慰行為を覚えるようになったのだが、男との行為をしっかりと記憶しているために物足りなさを覚えていた。  そして季節は巡り、小学6年生に上がった京は、夏休みにその男と出会った。  

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