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After Lessons

「んっ……んんぅ……っ」  あ……まい。 「ふあっ……あ、ふっ、ん、ん……」  ヒジキの火照った舌先が、口内の唾液を丁寧に舐めとっていく。  入れ替わりに与えられる刺激は淡く、なぜだかひどく甘い。  新たな空気が補充される前に隙間を塞がれ、意識がどんどん霞んでいく。 「ん、んんっ……あっ」  ヒジキの逞しい腕が、あっけなく砕け落ちた腰ごと僕を支えた。 「もしかして、こういうキス初めてですか?」 「き、君は違うのか?」 「……」  ヒジキは、NoともYesとも答えないまま、ただ笑みを深めた。  僕の知っている彼とは似ても似つかない妖艶な視線に犯され、鼓動のリズムがおかしくなる。 「モグさん……」 「ひゃぁう!」  再び近づいてきた湿った吐息に鼓膜を揺らされ、全身の獣毛が逆立った。  まるで匂いを確認するかのように、ヒジキが耳の後ろに鼻を埋めてくる。 「そ、そこはやめて……っ」 「獣人が耳弱いってほんとなんだ」  肌色ではない方のコアラ耳を甘噛みしながら、ヒジキが笑った。  まただ。  また、彼なのに、  彼じゃない。  ヒジキはいとも簡単にネクタイを引き抜き、ワイシャツのボタンを外して胸元を暴いてみせた。  そして露わになった上半身を見て、僕は息を呑む。 「な、なんでそんなにバッキバキなんだ……ッ」 「社長……モグさんのお父上、大の会議好きじゃないですか」 「So……?」 「待ち時間とか暇になるとついモグさんのこと考えちゃって、すぐここがこうなっちゃうんで……煩悩を振り払おうと筋トレしてたらいつの間にか」  わーお。  Hijiki’s hijiki is mossa-mosa.  ……ってふざけてる場合じゃない!  ヒジキは躊躇う素振りなんかこれっぽっちも見せずに、下半身まで堂々と露出してしまった。  そして動けない僕に覆いかぶさり、慣れた手つきで、下ろしたばかりのストライプスーツを脱がせていく。  ヒジキの無骨な指先は、その容貌に見合わずとても優しい。  まるで輪郭を辿るように、僕の薄っぺらい身体をゆっくりと撫でた。 「I’ve been waiting for this moment for so long...」 「き、君はずるい!」 「なにがです……?」 「え、英語、しゃべれるくせに嘘ついたりして!」 「Who said I don’t speak English?」  うっわ!  これ見よがしの流暢な英語がものすっっっっごくムカつ―― 「モグさん? どうしたんですか?」 「ど、どうしたって……あっ、あっ」  君がを鷲摑みしながら、に指を突っ込んでるからじゃないか!  あと、股間がリアル!  もっさもさの黒い繁みがリアルだし、真ん中に聳え立ったそれはサイズ感が明らかにおかしいし、先っぽから出ちゃいけない雫がどんどん出てきてるし、なんかテッカテカに光ってるし。  全体的になんか嫌だ……! 「大丈夫です。今夜は最後までしません」 「あ、そうなのか……?」  うわ、バカ!  なに残念そうな声出しちゃってるんだ、僕ってば!  ヒジキは驚きを隠しもせず目を見開いたかと思うと、なにかを振り払うように短い黒髪を激しく揺らした。 「No. ダメですよ、モグさん」 「えっ……」 「好きなんです。大事にさせてください」  ――I love you.  一番大事なところを耳の奥深くに直接注ぎ込むと、ヒジキは僕の股間を押しつぶした。  むき出しの欲がこすれ合い、はしたない音を立てる。 「モグさん……」  彼の燃えるように熱い吐息が、しっとりと僕の肌を湿らせた。  ――I’ve been waiting for this moment for so long...  脳内でフラッシュバックしたヒジキの言葉が、自分の声で上書きされていく。  二年間ずっと心の中で燻っていたものが、言の葉に変わっていくのを感じる。 「I love you, too.」  大好きな彼の笑顔が弾けたを見届け、やがて僕は、与えられる快感にただ身を任せた。  fin

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