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3-7 夜は続いて

僕は怖い話が大の苦手だ。 幼い頃、皐兄と夏兄に連れられ映画館へ行った時、夏兄が面白いよと言いホラーを勧めた。幼かったせいかよくわからずに一緒に見ると、その映画があまりにも怖くて、大泣きし途中退室をしたのを覚えている。それ以来、怖い話が大の苦手となった。テレビで夏になるとやっている心霊特集は、絶対に見ないと決めていた。 苦手だなぁ、、、、 武藤君が、部屋の明かりを落とした。 「さっそく始めるか、一人一個ずつな!まずは俺から!」 武藤君がさっそく話を始める。 「ちょっと、、僕は、苦手なんで、、、先におやすみしますーーー」 布団にこもる。 「おい!出てこい!」 武藤君が無理矢理、布団をはがす。 「えっー無理!!怖いの無理!!」 「そうか、わかった」 僕の脇腹を全力でくすぐってきた。 「ちょっと、、、ハハ、、、、ハハ、、やめ、、、」 「話聞くまでやり続けるぞ!」 「わかったよーーーーーー」 僕は、大人しく聞くことにした。 「愁君、無理しなくてもいいんだぞ。」 凛君が心配してくれる。 「無理しようか!」 武藤君は、くすぐる体制を維持している。 「勇は、だまっとけ!」 「大丈夫、、ハハハ、、、ありがとう。」 僕は仕方なく怖い話を聞くことにした。 武藤君が話し始める。 「これは、俺が実際に体験した話だ。今から一年前。ちょうど今と同じくらいくそ暑い日だった。部活から帰る途中、俺は、無性にアイスが食いたくなり、コンビニでサイダー味のアイスを買った。アイスを食いながら、歩いていると、うずくまっている爺さんがいて、どうしたのかと聞くと、足をくじいて歩けないと言った。すぐ近くに家があるから、連れて行って欲しいと言われ、爺さんを背負うことになった。歩けど、歩けど、爺さんの家にはつかない。まだかと聞くと、もうすぐだと言う。ここじゃと言われた場所は、古びた神社だった。ありがとうと言われ、神社の中へすっと消えていった。俺は、何を見たのだろうか。」 「ばぁ!!!!」 武藤君が懐中電灯で自分の顔を照らす。 「きゃあ!!!」 僕と優君が同時に声を上げる。 武藤君がゲラゲラと笑っている。 「おいおい!やめろよなー」 凜君は若干驚きながら言う。 「そのお爺さん、神主さんですよね?」 重岡君が冷静に武藤君に聞く。 「そういうことになるなー」 武藤君が誇らしげに言った。 「なぁーんだ。勇、ただの良い人じゃんー」 東条君が、にっこり笑った。 「だな。」 藤澤君も頷いた。響君も、笑っていた。 「俺の人の良さもわかったことだし、次、藤澤、いけ!」 藤澤君が静かに話し出す。 「俺も実際に体験した話だ。この前、部活でサッカーの練習をしていた時のことだ。練習に夢中になり、気づくと夕方になっていた。片付けをして、部室へ戻ると、一つのサッカーボールが残っていた。誰かが片付けをし忘れたと思い、そのサッカーボールを持って、用具室へ向かった。ボールカゴにサッカーボールを入れ、また部室へ戻る。すると、また一つ、サッカーボールがあった。変だなと思ったが、仕方なくボールカゴへ戻した。また戻ると、一つサッカーボールがあった。俺は、無視して帰ったが、あれは、何だったのだろうか、、、」 僕と優君は、絶句する。 「やべぇ、、それ、やばいやつだろー」 武藤君が意外にも怖がっている。 「こぇーー」 凛君も怖がる。 「実は、それオイラなんだ。恭くんは、優しいから、何回までなら片付けてくれるか、みんなでジュースかけてたんだぁ」 東条君が、恐る恐る言った。 「お前かい!」 武藤君と凛君が同時に突っ込む。 「へへ、結果は、オイラの一人勝ち。みんな一回までで、オイラが二回にしてた。その節は、ありがとう。おかげでたくさんジュースがもらえたよ。」 東条君が、藤澤君にお礼を言う。 「お前なー」 藤澤君が、呆れている。 「気を取り直して、次、瞬な!」 「オイラは、話すネタないから、パスーーー。凛くん頼むよ!」 「そうだな。俺は、この前、響君と体験したことを話すかな。」 凛君は、静かに話し出す。 「ブラスバンド部は基本的に大会前じゃないと朝練はしないんだが、新入生歓迎会の曲でみんなより仕上がりが遅れていたのがあって、俺は、独自に朝練をやっていた。朝早く音楽室へ向かう途中、響君と偶然会って、一緒に音楽室へ行くことになった。音楽室が近づくと、誰もいないはずの部屋からピアノの音が聞こえてきた。俺らは、そっーとその扉を開ける。すると、音は鳴り止んでいて、誰もいなかった。周りを探しても人の気配は全くなかった。あれは、もしかすると、音楽室で亡くなった人の霊なのか、、」 優君は絶句する。 「やべぇーな。今回は、マジなやつだな、、」 武藤君が本気で怖がり出す。 「音楽室かぁ、、、確かに、でるかもな、、」 藤澤君が呟く。 「あの、、、実は、、それ、僕なんです。」 僕は、恐る恐る手を挙げた。 「へっ?」 みんなが僕を見つめる。 「えっと、、、家にピアノなくて、たまに無性に弾きたくなる時があって、黙って弾いてるんだ、、、あの時、二人の話し声が聞こえて、慌てて隠れたんだよ、、上手じゃないし、なんだか恥ずかしくて、、、」 「そうだったんだぁ。」 凛君と響君がホッとしている。 「悪い奴には、お仕置きだな!」 武藤君が僕をくすぐってきた。 「ごめーーんって!!!」 みんな笑っていた。 「じゃあ、次は、音宮だな。」 「僕も、怖い体験は、凛君と同じものしかないから、優君に回すよ。」 「ごめん、、、ウチも苦手だから、、、パスーーー」 「仕方ないな。玄、最後、本当に怖いの頼むぞ!」 「いやいや、大丈夫だよ。」 僕と優君が突っ込む。 重岡君が落ち着いて話し出す。 「わかりました。あまり怖くないと思いますので、安心して聞いてくださいね。実は、私、霊感があるんです。みなさんには、黙っていましたが、ここに来たときからずっと人の気配の感覚がありまして、その、なんというか、ずっと見られている気がするんです。嫌な感じはしないんですけど、常に一緒にいる感じがするんです。ほら、そこにもー」 「ちょっと!!!!!」 優君と僕が一斉に言う。 「玄、冗談は、やめろよ!!」 武藤君が苦笑いをする。 「まったく、玄くんは、冗談が好きだねぇー」 東条君も苦笑いをしている。 「これが本当なんですよ。確かにそこにいる気がするんです。今は、そこの扉の向こうにいる気がします。」 みんなで扉を見つめる。 ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、ペタ、 足音が聞こえてきた。 「嘘。ちょっと、、待ってよ!!!!!!」 僕は、身体が震えだす。 「重岡くーん。」 優君は、重岡君の背中につかまり、後ろに隠れる。 「来るならこいや!」 武藤君がカラ元気に叫ぶ。 足音は、止まり、勢いよく扉が開く。 「ぎゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」 みんなで叫ぶ。 そこには、ランタンを持った叔父さんがいた。 「まだ、起きていたのかい?元気だねぇー」 扉を閉めて、一階に降りて行った。 「なんだ、叔父さんかぁ。」 僕は、気が抜けた。気づくと、藤澤君に抱きついていた。 「あっ、ごめん、、、」 すぐに離れる。 「いや。大丈夫だ。」 藤澤君は、伏し目がちに言った。 「玄!!マジでやめろよな!」 武藤君が若干怒っている。 「確かに、人の気配を感じたのですが、、」 「かんべんしろよ!」 凛君と東条君がホッとしている。 「ごめんね。元宮君。怖がらせたね。」 重岡君は、元宮君に優しく囁いた。 「もう、これっきりだからね。」 優君は、頬を膨らませていたけど、その顔は、幸せそうだった。 「さっ、寝るか!」 みんなで寝ることにした。 こうして、僕らの夜は深まっていったのだった。

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