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そっと、口吻けを。 14

美波はお茶を一口飲んで、何故か大きな溜息をつくと、珀英をしっかりと見つめて言った。 「パパとしばらく暮らしてみてわかったの。パパには珀英がいるけど、ママには私しかいない。だから私がママを守らなくちゃ。それに・・・パパってものすっごく・・・面倒くさい・・・」 「え?!なに、どういうこと?!」 「あー・・・わかります」 「わかるの?!」 ちょっといい話しでうるっときてたのに、急に話しの矛先(ほこさき)がオレに向けられたことにびっくりする。 美波は珀英を見上げると、一気にまくしたてた。 「だって、リモコンの位置は決められてるし、牛乳パックは飲み口をこっちに向けて冷蔵庫に入れなきゃいけないし、食器も決まった場所にしまわなきゃいけないし、カップラーメンのお湯は2センチ下までしか入れちゃいけないし、洗濯物だって・・・」 「・・・わかる・・・」 「何で脱いだ服をたたんで洗濯カゴに入れなきゃいけないの?!これから洗うのに?!意味あるの?!」 珀英は大きく頷(うなず)いて美波の話しを、愚痴(ぐち)を聞いている。二人で急にわかりあってる雰囲気を作り出す。 いやいやいやいや、待て待て。 オレは思わず、 「たたんどいたほうがカゴにいっぱい入るし、見た目も綺麗じゃん」 「あんなところしょっちゅう見るとこじゃないし、誰も見ないんだからいいじゃない!それにいっぱいに溜めないで。もう・・・そういう面倒くさいのがいっぱいで・・・無理・・・」 瞬殺で論破されるし。なんか、元嫁にも同じこと言われた気が・・・。 珀英はうんうん頷きながら、むっとしているオレの視線に気が付いて、しれーっと視線を外してお茶を一口飲んだ。 そんな話しをしていたら、頼んだお寿司が運ばれてきたので、3人でお寿司をいただく。 美波は隣に座るオレを無視して、共感してもらえる珀英に、お寿司を食べながら愚痴を言い続ける。 「他にも色々細かいこと言われて、面倒くさい・・・珀英はあれ全部やってるの?」 「あー・・・最初はわかんなくって大変だったけど、今は覚えたから。慣れちゃえば大丈夫」 「私は無理だった・・・ママと暮らしてるほうが楽。だから、パパのことは、珀英にお願いしたいです」 美波のその言葉に、珀英は大きく頷いている。 「しょうがないよ・・・わかった。緋音さんのことは、オレにまかせて」 よくわからないけど、珀英がめっちゃどや顔で美波に言う。美波は安心したように満足気になんか頷いてる。 いやいや、待って待って。 「ちょっと待って。え?オレが悪いの?」 「悪いんじゃなくて・・・」 「面倒くさいだけ・・・」 二人が普通に言うので、納得しかけたけど納得しちゃいけない。 恋人と娘に面倒くさいって言われてる。なんかおかしくない? しかも美波なんかまだまだ小学生の子供なのに、妙に大人で・・・離婚したりなんだりで、環境に適応するために少し早く大人になっちゃったのかな。 それでも、父親の恋人と、父親の文句言いながらランチするって、10歳じゃあり得なくない?え、15歳くらいサバ読んでない? 二人はオレのことなんか気にせず、オレがいかに面倒くさいかを言い合って確認しあっている。 その間にもお寿司は順調に減っていっている。器用だな。 オレの目の前で普通に言ってるから、自分の悪口を聞いている感じだったけれども。 二人の話しを聞いていたら、オレたしかに面倒くさいなって思った。

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