今日も今日とて、緋音さんは仕事に行っていて。オレは家事をせっせとこなし。もうすぐ緋音さんが帰ってくる。 ほぼ家政夫状態だけど、不満なんかあるわけない。 夕ご飯も準備はできてるし、お風呂も完璧だし、ビールも冷えてる！ 緋音さんが帰ってきたら、ご飯食べて、晩酌なんかして、シャワー浴びて、テレビなり映画見たりしてもいい。 二人でゆっくりとした時間を過ごしたい。 でも、本当は。緋音さんの体を考えたら、そんなことしちゃいけないんだけど。でもやっぱり、それよりも何よりも。 オレは緋音さんとキスがしたい！ 最近全然まったくできていない！ キスがしたいし、泡よくばセックスもしたい！ 触れたいし抱きしめたい。 口吻(くちづ)けたい。 ただそれだけで。 傍にいて、触れられれば。 それでいいだけで。 ピンポーン。 綺麗に掃除したリビングの椅子に座って、スマホの時計を見ながら、今か今かと待ち構えていたら、玄関のチャイムが鳴った。 さっき『帰る』と連絡があったので、間違いなく緋音さんだろう。 オレは素早く玄関へと走り、覗き穴で緋音さんを確認すると、ドアを開けた。 「あ・・・ただいま」 ドアを開けた向こうに、ちょっと照れ臭そうに、ほんのり頬を染める緋音さん。 春のこのほんのり暖かい陽気にぴったりな、はにかんだ緋音さん。 あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！ 無理ぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーー！！ 可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い！！ 春物の黒いトレンチコート着て、嬉しそうにオレを見上げる緋音さんを、オレは堪(たま)らず腰を掴んで引き寄せた。 「え？！な・・・なに？！」 驚いて声を上げる緋音さん。その少し高い声すらもいやらしい。 オレは緋音さんを玄関に引き入れると、流れるように鍵をかけてチェーンをかけた。 これで邪魔者は入ってこれない。 「は・・・珀英？・・・んんっ！」 オレは緋音さんの、腰を抱きしめて引き寄せて、顎(あご)を掴んで上向かせて、口唇を重ねて、言葉を封じた。 驚いて逃げようとする緋音さんを、全身で押さえ込んで、無理やり口唇を開かせて、舌を差し込んで、柔らかい舌を吸い上げる。 久しぶりの、緋音さんの味。 緋音さんの体を玄関ドアに押し付けて、腰を顎を強く引き寄せて、絶対に逃げられないように、全身全霊全てを閉じ込めて。 「・・ふあ・・・んん・・・はく・・」 口唇の端から緋音さんの声が漏(も)れる。 漏れる声も。逃げようとする腰も。漂う甘い甘い匂いも。オレの胸を押し返す腕も。吸い付いてくる口唇も。繰り返される熱い呼吸(いき)も。搦(から)まって離れない舌も。 全部、全部。 閉じ込めたい。誰にも聞かせたくない、見せたくない、触れさせたくない。 オレの、オレだけの緋音さん。 愛おしさに、気が狂う。 深く。 深く舌を差し込む。 緋音さんの舌を搦めとって。 吸い上げて。 閉じ込めて。 封じ込めて。 そっと。 口吻けを。 Fin