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KISS 2

※ 「KISS」1作目の続きになります。主人公が「鈴木」から「鈴木の恋人」に代わります。  鈴木と2人で初めてのクリスマスに彼はバイトを入れた。人手が足りないんだよ、と言うけど、当たり前だ、クリスマスだ、みんな好きな人と過ごすんだよ、僕は腹が立って、謝る彼を置いて歩き出した。 「ごめん、早めに帰るから。」彼は謝りながら、後ろから僕を追いかける。 「何時?」僕は歩く速度を上げる。 「11時、いや、12時までには。」彼の返答は僕を怒らせる。 「もうほとんどクリスマス終わりじゃないか。」僕は立ち止まって彼の方を向く。 「だからギリギリ12時までには。」 僕は思う、それじゃ意味がないんだよ。  12月24日クリスマスイヴの日、待ち合わせは海のそばの公園、夜の12時前。この寒い中、海風が吹き付ける、外。  彼は約束の10分前に走ってきて、クリスマスプレゼントはタンデムシートとヘルメットだと言った。「バイクの後ろ乗りたいって言ってただろ、だから後ろに乗れるようにタンデムシートつけたんだよ。」と言ったのだけど、「どこにあるの。」と僕が言うと、「家。」と答えた。「バイト帰りだし、飲んだら乗れないし。」と彼は平然と言った。僕が今日一日どんな気持ちでいたのかも知らずに。「クリスマスにプレゼントなしで来たわけだ。」と僕が言うと「いや家に帰ったらあるよ」と彼は返答する。「でも、ここにはないわけだよね」と僕。「そうなるか」彼は少し頭を掻いて斜め上を見て言った。 「バカかっ、オマエっ。」と言って僕は歩き出した。彼は「ごめん。」と言って後ろからついてくる。彼は許しを請うように僕に話しかけた。 「明日どっか行こう、そうだ、夜景でも見に行くか。」 「クソ寒いのにバイク乗って山なんか行けるかよ。」 「だって、お前がバイクの後ろ乗りたいって。」 「言ってない。」 「でも、あ、じゃあなんか食べに行こう、バイト代入ったし。」 「ダイエットしてる。」 「なんで、ダイエットって。じゃあ、えっと何が欲しい、適当なところでなんかほしいもの。」 「適当ってなんだよ。」 「いや、家とか言われるとちょっと無理かな、って。」 「なんで家なんて言うんだよ、お前本当になんで。」  そう言って振り返って見た彼の表情はどう表現したらいいのか、とにかく困ってて何とかしなければいけないオーラ満載で、僕はちょっとかわいそうになってきて、もういいやと思って、ポケットから箱を取り出し、シルバーのリングを彼の指に、彼の左の人差し指に、はめたかったのだけど、予想以上に指が太くて、入らない。僕はなんだか泣きたくなって、もういいと言って走り出そうとしたけど、彼は僕の腕を掴んで、ちょっと真剣なくらい怖い顔をして「ちょっと待て」と言った。でも、どうやってもシルバーのリングは人差し指には入らなくて「ごめん、ここなら入るわ」と言って僕に見せたのは、僕のあげたシルバーのリングがはめられた小指だった。僕は急に笑いが止まらなくなった。「どんだけ、ごついんだよ、お前は。それ、かなり大きくしてもらってるんだぞ。」と言うと、「ごめん」と頭を下げた。  その時汽笛が聞こえた。「あ、聞こえた、良かった。」と彼は言った。続けて「ここ、汽笛が聞こえるんだよ。でもやっぱり寒いか。」と言って着ていたコートで僕を包み込んだ。僕は彼のコートの中にすっぽりと納まる感じになる。僕は「子供みたいだからからやめろ」といったけど、彼は僕を抱きしめたままだった。この、どう見ても(多分)女と付き合ったこともない、僕より20センチちかく背の高くてゴツイ男が僕の喜ぶ顔が見たくて考えたことが「汽笛」だったことがうれしくて、今日はこのまま彼に抱きしめられたままでもいいかと思った。 ※左手の人差し指のリングには、「自分を見つめてほしい」という願望があります。

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