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第1話
果てが無いようで果てがある世界。
地球風に言うと宇宙というこの世界で、エルネスト・ノイブルグと有川惟信(いしん)は出会った。
出逢った経緯はこうだ。
エルネストはまたしても地球風に言うと恒星圏内にあるケプラー452bという地球とそっくりな……双子とまでは言えないが、いとこくらい似ている惑星のとある国の第三王子として生きてきた。
エルネストの国では17歳で番う人間が定める。第三王子ともなればそれなりの相手が宛がわれるのは間違いない。父親も祖父も曾祖父も、国から美しい番を宛がわれ、子孫を残してきた。しかしエルネストは違った。見ず知らずの相手を番だと宛がわれることに、異常な程の嫌悪感を示した。エルネストはどうしても嫌だった。
なぜなら、幼い頃から繰り返し見る夢に出てくる少年こそが自分の番であると信じて他ならないからであった。
ありふれた姿形をしていた少年は珍しい黒髪に黒い瞳、そしてこの世の純粋かつ甘いモノを結晶にした笑顔でエルネストに向かって必ずこう言うのだ。
「エルネストが一番好き」
他の国の言葉でもない、エルネストが全く聞いたことのない言語だが、それはエルネストが最も欲している言葉であるという予感めいた確信があった。
父親にも母親にも兄弟にも伝えたが「そんなバカな」と一笑され信じて貰えない。
連れて来れたなら信じてやると言われたが、とうとう今日まで彼の名前もどこに住んでいるのかすらも、わからないままだった。
そしてそれを探す猶予など自分にはない。
「フラマリオン調査団……」
エルネストは明日出発する光跡船を眺めながら呟いた。番が宛がわれるのは1週間後だ。この光跡船に乗ってフラマリオンに逃げてしまえば、夢の中の彼に会う猶予ができるのではないだろうか。
王子として有るまじき行為に、国王始め兄弟たち、何より国民は自分を許さないだろう。
それでもどうしても彼にひと目合ってみたいという衝動を止めることはできなかった。
ー続く
※用語解説※
・恒星圏内(太陽の光が届く範囲)
・フラマリオン(エルネストの国での地球の別称)
・光跡船(いわば宇宙船、地球製のものより優れている1億光年を24時間で飛行する)
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