80 / 201

第80話 佐々木先輩と公園

僕の心は早いだ。 もう少ししたら先輩に会える! 僕は一所懸命走った。 公園は割と近かったけど、 その距離が何キロにも思えた。 先輩から到着のメッセージが 来る前に飛び出してきたけれど、 僕が南口に到着したの同時位に 先輩がやって来た。 向こうから自転車で 向かって来る先輩を見つけた時は、 胸躍る気持ちだった。 「やっと会えた!」 何だか何年も先輩に 会って無かったような気がした。 「先パ~イ! こっち、こっち」 僕が大声で呼んで手を振ると、 先輩は僕の所まで来て 自転車のブレーキを掛けた。 僕がたまらなくなって先輩に飛びつくと、 「お~っと」 と言いながらも、 「お前って感情表現が 豊かだよな」 とちょっと照れていた。 そして先輩は乗って来た自転車を 入り口のフェンスの所に停めて、 そばにあった遊び場の ベンチに腰かけるよう僕を誘った。 「先輩の私服って初めて見ました」 先輩は変な顔をして、 「変か?」 と聞いた。 「いえ、想像していた通りに ステキですね~ 僕は時々女の子と間違えられちゃうから、 私服には結構気を使うんですけど、 先輩は何を着ても 男っぽそうですね~」 僕がそう言うと、 先輩は僕の顔をじ~ッと見て、 「要って奇麗な顔してるよな。 正直言って、 最初はずっと探し続けていた 匂いに興味があっただけで、 あまり容姿には気を取られて無かったけど、 お前、表情がコロコロ変わるのな。 目が離せなくなって、 いつの間にか好きになってたよ。 もちろん、匂いは置いといてな。 なんだか、何時も何かに一所懸命でさ、 妬けるけど、特に浩二が傍に居る時はな」 「え~ 矢野先輩と一緒に居る時って、 何時そんなところ見たんですか~?」 「何時って、お前ら、 しょっちゅうイチャイチャしてたしな。 登下校も一緒だし、 時々校内で会ってはベタベタしてたしな」 「え~ 僕達、そんなに一緒に居ましたか?」 「お前は気付いて無かったろうけど、 結構すれ違ったぞ」 「え~ 初耳です~」 「ま、言って無いからそうだろうな」 そう言って先輩はハハと笑った。 「僕達が初めて会話したのって、 体育館の所にある階段ですよね?」 「まあ、そうなるな。 浩二が何時も自慢してる 後輩の事は知ってたから、 一度は話してみたいと思ってたけど、 いつもは遠目にしか会えなかったしな」 「先輩、何時僕の事、 意識し始めたんですか?」 「ん~? 何時だろう? お前、追っても、追っても逃げるんだもんな」 「だって僕、 先輩の事そんなに知らなかったし…… 最初なんて、何言ってんだろ、この人? って思いましたもん! また言い回しが謎だったし!」 そう言うと先輩は大声でワハハと笑った。 「何ですか? そんなにおかしいですか?」 僕がプ~ッとして尋ねると、 「お前、本当に分かってなかったんだな。 俺、こんなに純な奴いるのかって疑うくらい お前ってまっさらだったよな。 ま、俺も知識ばかりで実践になると てんでだったけどな」 「僕、そっちに驚きましたよ! まさか先輩の初ゴニョゴニョが……」 と言いかけて少し恥ずかしくなった。 先輩はそんな僕の思いを受けてか、 「ハハハ確かにな。 それ、浩二にも言われるな でも、お前を見つける事が出来て良かったよ」 「先輩も運命の番を探していたんですよね~ 不思議ですよね。 運命の番って会う確率は ゼロに等しいって言われてるのに、 こんなに近くに居た何て……」 「俺も、まさか会えるとは思っていなかったよ。 それもこんなかわいい……」 「え? 先輩?  もう一度言ってみて下さい。 可愛い?」 「あ、イヤ…… 奇麗な? あ? 違ったか? カッコイイ……とはちょっと違うな? イヤ……やっぱり俺には可愛いよ。 凄い可愛い」 そう言って僕の髪に先輩の指が絡んできた。 そして、そっと耳元で、 「愛してる」 そう囁いてくれた。 僕は体温が上昇をするのが分かった。 「お前、フェロモン出てるぞ」 先輩のそのセリフに、 「え? 僕、匂ってますか?」 とびっくりして聞いた。 自分では、まったく気付かなかったけど、 先輩に優しく触れられ、 なんだかたまらなくなった。 そして僕は思った。 そうか、これが発情すると言う事か。 僕は先輩に触れられると、 もっと先を願ってしまうんだ。 そう思って、更に体が熱くなるのを感じた。

ともだちにシェアしよう!