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「うちにも来たんですけど。涼さんの持ってる
得意先に営業かけてるみたいです。
涼さんから継いだみたいに言うから
間に受けて対応しちゃってる店もあるみたいで。
涼さんが勧める物より安いのに変えないか。
量入れてくれたら値引きするって。
まあ。さっきの話じゃないですけど
どの店もコストは抑えたいから 話聞いて
注文した店もあるらしいです。
この業界 横の繋がりは結構あるんで
すぐに情報って回ってくるんですよ。
それに うちの兄弟子の雨宮の店にも来て
なんかその言い草にムカついて
追い返したって電話があって。
親方は涼さんがそんないい加減な事
する筈無いって宥めたんですけど
その後 うちにも来て。店には入れませんでした。」
え。。そんな。。
全然知らない。
雨宮さんとこはこの間行ったばかりで
次回の訪問予定も立ててる。
「す・・すいません。知りませんでした。
あの。雨宮さんにはすぐに謝りに行きます。
あと 他の店も。教えて頂いて助かりました。」
何よりこんなつまらない事で煩わせたのが
本当に申し訳ない。
ああ。だからだ。
だから。さっき 森保さんは・・。
「森保さんにも・・。」
謝らないと。
そう思ったが 桜井さんは首を振る。
「親方は最初から涼さん信じてるんで。
糸唐辛子持ってきた時にでも事情話してくれれば
大丈夫です。逆に涼さんの事心配してますから。
それに 他の皆さんも涼さんに連絡しないのは
多分 涼さんは知らないって わかってるからだと
思うんですよね。同じ会社でも乗り換えたら
やっぱり引け目は感じますから。」
その言葉が余計申し訳ない。
でも。桜井さんの言う通りにした方が
いいんだろうな。
まずは事実確認。。
「わかりました。本当に申し訳ありません。」
桜井さんは ニコッと微笑み じゃあ。と
店に戻っていった。
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