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ラブリー
僕の恋人は王子様みたいにかっこいいんだ。背がすらっと高くて、目は一重で切れ長。髪はサラサラで、かけてるメガネがばっちり似合う。僕らはとても愛し合っているから、お互いの家に行ったりきたりする。朝から映画を見て、ちょっとおしゃれなカフェで軽くランチ。ウィンドウショッピングをしながら、これは君に似合う、でもこれは僕の方、とか言いながら暗くなるまでずっと一緒にいるんだ。
僕の恋人はかっこいいから、女の子からの告白なんて日常茶飯事。いちいち怒ってたら身が持たないよ。「好きです」って言われたら、どんな気分?って聞いたことがあるけど、彼は、
「別に。授業を受けていて当てられたみたいなものだよ。『好きです』、で答えは?みたいな感じ」
と、答えて、
「でも、お前が言ったら、焦る、すごく焦る。だって俺の方が何倍も好きだから、どう答えていいのかわからない。」
とてもかわいいことを言う。
ある日事件は起きたんだ。僕は知らないクラスの知らない女の子に声をかけられた。
「話があるの。」
これ、いつものパターンだ。僕の恋人に、手を紙渡してくれとか、デートしたいから話付けてくれとか。こういうの、慣れてるから平気。適当に話して、あとは彼がうまくまとめてくれる。
「いいよ。」
運動場が見渡せる屋上で知らない女の子は話し始めた。
「す、好きです。」
うん知ってる。わかってる。
「好きです、あなたが。付き合ってください。」
え、僕?え、これはいつもと違うのだけど、え、どうしよう、なんて言ったらいい?
僕はものすごく焦ってしまって、女の子の顔が赤くなるのが、うつってしまって、僕の顔も真っ赤になって。あせってもじもじしてたら、僕の恋人が屋上の貯水槽の影からものすごい剣幕で走ってきたんだ。
「どうなんだよ。」
大声で怒鳴りだした。
「どうなんだよ、早く答えろよ、なんで迷うんだよ、なんで。」
怒鳴ったかと思えば、今度は涙声になった。
女の子は唖然としてるし、僕はびっくりして声も出ないし、いつの間にか女の子の友達は走って出てくるし、昼休みは後5分で終わりますよの放送は聞こえるし、昼休み最後の曲は「ラブリー」です、と放送部員が言ったとき、僕の恋人は僕の手を引き抱きしめ、そして、おでこにそっとキスをした。そして、驚愕の表情(笑)をしている女の子たちに
「俺の男に手を出すなよ。」と言った。
噂はすぐに広まると思うよ、僕の恋人はモテるんだから。明日の朝はどうするの、いやそれよりも午後の授業。でも僕は、ちょっと、いえいえ、かなり嬉しかったんだ。
「どうするの。」
「考えてなかった。」
僕の恋人は耳まで真っ赤にして下を向いた。
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