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11訓練してたら尻尾が気になる
「やぁー!はー!とおりゃあーーー!」
「・・・」
「うおおおおー!」
「あのよぉ、セナ」
「なに?」
「その変な掛け声気が抜けるんだけど」
「なんでだよ、真面目に訓練してるのに」
「訓練はいいけどよ、セナは戦闘のセンスなさすぎ」
「えぇっ」
セナは約束通りここ数日、竜神族のリドレイにレベル上げという名の訓練をしてもらっていた。相変わらずレベルは1のままだが。
真面目に受けているのに、掛け声が変だと追い打ちをかけるようにセンスのなさを指摘された。セナは元々あっちの世界では普通の人間で、フリーターだから戦闘出来なくて当たり前である。
「剣か?剣がダメなのか?なら格闘で」
「じゃあ拳打ち込んで来いよ」
「よし!オオオオオオッ!」
「・・・てぃッ」
「ぐはぁッーーー!!!」
セナはリドレイの尻尾でふっ飛ばされ、地面に転がる。
「ワリィ、大丈夫か」
「ゴホッ、ゴホッ・・・尻尾にすら負けた」
「休憩しようぜ」
「・・・うん」
セナは立ち上がると、側の芝生に座る。ぴよ太は芝生を転がりながら遊んでいた。
そしてゆらゆら揺れるリドレイの尻尾が気になって仕方なかった。尻の中をあの尻尾に突っ込まれたかと思うと、少しいたたまれなくなる。
「ちょっとリドレイの尻尾触っていい?」
「あ?なんだ俺様の尻尾に惚れたか?」
「カッコイイなと思って」
「そうか、そうか!たくさん触っていいぜ」
尻尾を褒められ気を良くしたリドレイは、セナの胸に尻尾を擦り付ける。竜神族の尻尾は固い鱗に覆われており、リドレイの髪色と同じ銀色をしている。太陽の光が反射してキラキラしている。
「綺麗だな、尻尾」
「そうだろ。まぁ昔はドラゴンや竜神族は鱗とか骨に至るまで至高品で、乱獲されたけどな」
「え、ドラゴン強そうなのに」
「ドラゴンは本来大人しい生き物なんだよ。竜神族だって戦闘民族だけど、別に戦闘狂じゃねぇし」
「リドレイはケンカっ早いよな。アディに突っ込んでったし」
「そりゃ、お前を俺様のものにしたいからな」
「またそれ・・・俺は俺のものだよ」
リドレイの口説き文句は遊びにしか聞こえない。
「今は乱獲されないの?」
「前よりは減ったかもな。アーディフィエルが魔王になってから乱獲禁止になったし」
「え、アディって意外と保護団体派?」
「さぁな」
「魔族に禁止されてるのに他に誰が乱獲してるんだ?」
「人間」
「え・・・・・そうなんだ」
セナは魔族と人間が対立しているこの世界の事が少しわかった気がした。
すると顎の下辺りをリドレイが尻尾で撫でてくる。
「リドレイ、くすぐったい」
「気持ちいいだろ?」
「くすぐったいって・・・んッ」
「なぁ・・・」
セナの顎の下をくすぐっていたリドレイの尻尾は、腹の辺りを撫で始める。何をしたいのかわかったセナは、こんな真っ昼間から青姦はゴメンだと立ち上がる。
「あのな、リドレイが俺のこと強姦したの忘れてないからな」
「お前が可愛いのが悪い」
「オレは可愛いくない。せめてカッコイイとか言ってくれ」
リドレイも立ち上がるとセナの腰に両手を回して見下ろす。
「カッコイイ」
「棒読みすぎる、心がこもってない」
「セナ、カッコイイ・・・」
カッコイイのはリドレイの方だが、そのカッコイイ男に言われるとセナはちょっと照れる。ついそっぽを向いて照れ隠しした。
「お前、可愛いすぎるだろ」
「・・・」
「セナ」
結局可愛いに戻るリドレイ。セナはまた訓練に戻ろうと言おうとしたら、凛とした声に呼び止められた。
声の方を向くと日傘を挿したジゼが立っていた。顔が青い、というか死にそうな顔だ。ジゼは吸血鬼なので日差しに弱いのだ。
「何してんの、ジゼ」
「死にそうな顔だな、吸血鬼のくせに昼間に外出るからだ」
「勉強の時間ですので、お迎えに来ました」
「あぁ、そういえば。わかった。リドレイ、訓練に付き合ってくれてありがとうな」
「おお、また来いよ」
リドレイに髪を撫でられてから離れた。頭にぴよ太を乗せ、ジゼの後ろに着いて行きながら今日の勉強は何か聞いてみた。
「本日の授業は、魔法です」
「おお、なんかファンタジー要素来たな。アディもそういえば使ってたな、火とか出して」
「魔王陛下の魔力は魔族の中でもトップクラスですから」
「へぇ、やっぱり魔王ってすごいんだ」
「何を呑気に。打倒魔王とか言ってる勇者が」
「そういえば、そうだった」
「さぁ、後は教室に着いてからですよ」
「はーい、先生」
すっかり教師気取りのジゼは、セナに先生と呼ばれて日差しの中迎えに来て良かったとご満悦の様子だった。
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