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21勇者Lv1スライムすら倒せない

「魔王!今日こそお前を倒し、世界に平和を取り戻してみせる!うおおおおおーーーー!」  勇者と思わしき黒髪の青年は剣を手にし、暗黒の空の草原の中を走り出した。  勇者の息が、地面を蹴る靴の音が、剣が草を切り裂く音がまるでスローモーションのように響き渡る。  青年が剣を横に振った先には・・・・・ 「・・・・てぃっ」 「ぐはぁッーーーー!?」  哀れな声を出し、ベシャっと地面に転がる青年。 「・・・くっそ~、今日も一撃も与えられなかった!」 「ピヨ」  地面に転がる黒髪に黒目のよく見ればイケメンな青年は、セナ。別の世界から来た人間である。訳あって勇者をしているが、相変わらずLv1のままのようだ。  頭に乗っているヒヨコは、ぴよ太。これでも精霊らしく、元の世界で助けたら一緒に転移して来た。   「ハハハッ、セナは今日も元気だな」  そして遠くから笑う白髪に赤目の美丈夫は、アディ。魔族を統べる魔王だ。セナをからかうために勇者に仕立て上げた張本人である。今ではセナを特別な存在として側に置いている。 「セナ、大丈夫か?俺様の華麗な尻尾攻撃がヒットしちまった」 「あ、うん、ちょっと脇腹ヒリヒリするけど」 「何!よし、見せろ」 「えっ、あっ、ーーーっああ!あははっ!やめろよ、リドレイ!くすぐったい!」  セナの脇腹をさわさわと撫で回すのは、リドレイ。銀髪に紫の瞳の竜神族という男前な魔族だ。ドラゴンに変身出来る。  くすぐったくて身を捩っていると、後ろから抱きしめられた。アディである。 「リドレイ。貴様、脆弱な人間のセナの骨が折れたらどうしてくれるのだ」  「俺様がそんなヘマするわけねーだろ。お前こそ、毎晩毎晩セナを独り占めとかズルくないか?セナはまだ誰のものでもねーんだからよ。将来的には俺様のもんになるけどな」 「セナは俺を好きと言ったのだ。俺のものだろう」 「俺は誰のものでもないんだけど」  二人のイケメン魔族に挟まれて、セナはちょっとドン引きした顔で否定した。仮にも魔族の中で、1、2位を争う実力者が男をかけて男同士で争うのは昼ドラの時間には早すぎる。  セナは二人を押し退けて、地面の剣を拾った。 「とりあえず訓練は終わり。戻ろう」 「ふむ、そうだな」 「しっかし、ぜんぜんセナのレベル上がらないな?」 「おかしいよな・・・はっ!もしかして、よく自分よりレベルのかけ離れた敵と戦っても経験値獲得しないというアレなのか!」 「おぉ、なるほど」 「え、じゃあセナのレベル一生上がらなくね?」 「ガーン!!!」  まさかの盲点に、ここ1ヶ月のセナの頑張りが無駄な事に衝撃を受けた。それならば自分より弱い敵を倒せばいいと発言すると、リドレイがその辺から緑のスライムを拾って来た。 「ほいっ」 「・・・ほいって」 「ほら、Lv3くらいのスライムだぞ。サクッといけよ」 「う、うん」  セナは剣を握りしめるとスライムに向けた。するとスライムは、ぷるぷると震え出す。 「なんか、ぷるぷるしてる」 「そりゃあ、怖いからに決まってんだろ。これでも、命ある魔族だぞ?」 「うっ」 「それにコイツには残された家族スライムが、あそこに・・・」 「えっ!?」  茂みの隙間から大きさの違う緑のスライムが、何匹かぷるぷるしていた。親子だろうか。セナはその姿に剣を躊躇い鞘に戻す。 「無理だ、俺には・・・斬れない!」 「セナは優しいな」 「さすが勇者であるな」  セナはリドレイからスライムを取り上げると茂みに離してやる。スライムは親子で茂みの奥へと帰って行った。  いい事をしたから今日はいい事があるかもと、セナは思い魔王城へと帰還した。

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