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番外編魔族の国の勇者として
これで本当に最終回です!
今までこちらの作品を閲覧応援してくださりありがとうございました!勇者セナの物語もあと少し、楽しんでくださると嬉しいです(*^^*)
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昨日は散々な目に合った・・・俺は勇者としてこのままでいいのだろうかと、アディに直訴するために魔王の玉座に魔族の人達も含めて呼び出す。
玉座では相変わらず魔王アディがあまり表情の読めないお綺麗な顔で鎮座している。俺の横には頭にたんこぶ作ったリドレイが不貞腐れた顔で並んでいる。殴って悪いな、さすがにやり過ぎだ。
そして魔王補佐でもある吸血鬼ジゼが、議題について話し合うために進行を始める。
「では崇高なる我ら魔王陛下のために、勇者セナから提案があるようです」
ジゼの促しでアディの前に出ると俺は口を開いた。
「俺は魔王を倒すのをやめる」
予想外の言葉に他の魔族達は動揺し、頬杖ついていた余裕のアディも背を正した。
「ほお・・・俺の勇者もやめるという事か?」
「いや、勇者は続ける。俺は魔王と共に歩む勇者を目指すよ。いつか魔王が魔王を辞める気になるまで、魔王の勇者だ」
「・・・・」
「セナ、それは人のしての生をもつ貴方にとってはかなり難しい選択かと思うのですが」
「だよな」
「なんだよ、考えなしに発言したのか?だから俺様がサクッと魔王を倒してだな・・・」
「リドレイはちょっと黙っててくれ」
「ぐっ・・・・」
リドレイはさすがに今回は反省しているのか、それ以上踏み込んでは来なかった。
「ジゼの言う通り短い人間の寿命では、その日が来るのを見る事はないかもしれない。でも勇者として希望があるっていうのは、きっと人間の国にとっても良い事だと思うんだ。だから俺は魔王を倒さない勇者になるよ」
「そうか。セナ、ここへ来い」
「うん」
アディに呼び寄せられ玉座の前に立つと、またしても姫抱きされて魔王の玉座にそっと座らされた。キョトンとしている俺にちょっとだけ微笑むと、アディは魔族の方を向く。
「今より魔王アーディフィエルは魔王ではなくなる。そしてこの先の魔王は、セナとする」
「は?」
「え?」
「んんん???」
突然の魔王引退宣言と同時に、なぜ俺が魔王になってしまうのか俺以外の魔族達も頭にハテナが浮かんでいる。
「よかったな、セナ。これで勇者が魔王を討伐し、魔族の国を治めたと人間の国に報告出来るぞ」
「いやいやいや、まったく良くないから!俺が魔王っておかしいだろ!勇者どこいった!」
「魔王時々勇者でいいではないか」
「なにその、晴れ時々曇りみたいな天気予報なノリは!」
「素晴らしいです、魔王陛下!一滴の血も流さずに場を収め、我らの魔族の未来も配慮なさっているお考えは、まさに崇高なる我らの魔王陛下。そして新たな魔王陛下セナの隣に立ち補佐する私の夢が叶うのですね」
「おい、ジゼ!いつの間にそんな夢持ってたんだよ」
「なるほど、魔王セナさまの身体を洗い放題なんですね!裸で!」
「おーい、ラビ!さっきから可愛い顔して黙ってたと思ったら、そんな破廉恥な事考えてたのかよ!」
「フハハハハ!魔王セナを倒せば俺様が魔王として君臨して、セナを嫁にできるんだな!」
「お前バカだろ、リドレイ」
いつもの3人は勝手に自分達の妄想を膨らませるなか、アディは特に何も言わずに魔族達を眺めている。
「いいのか?」
「俺は別に魔王になりたかったわけではないからな。ただバカげた争いを終わらせたかったからだ。セナは勇者でも魔王でも、きっといい方向へとこの国を導くだろう」
「アディは魔王辞めても側に居るんだろ?」
「もちろんだ。お前は俺の勇者だからな」
「・・・はぁ。まぁいいか、じゃあ次の魔王が決まるまでの間だからな?決闘とかはなしだぞ、話し合いと多数決制も考慮してくれ」
「いいだろう」
「俺が魔王になったら、レベル上げる必要なくなるじゃないか」
「ずっとレベル1でよいではないか。それがお前のこの世界で生きる意味だとするなら」
「そうだな・・・・」
俺はアディの手をそっと握ってやると、魔王らしい笑顔を向けてやった。アディも今度はちゃんと笑っている。リドレイ達は、ズルいとか横から文句を言ってきたりこれからも魔族の国でこんな風に笑って過ごせるのかな。
「魔王に挑まなくても、レベル1のままでいいかな」
fin
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この度は「レベル1だけど魔王に挑んでいいですか?」を閲覧頂きありがとうございました!
これで本当に最終回とさせて頂きます、長らくお付き合い感謝です!
セナ達の物語はこれからも続くと思いますが、きっと他のシリーズでも断片的に語れたらと思います。また現在執筆中の、「転生したら溺愛騎士の魔剣」とも世界観が繋がっています。もし気になりましたら、覗いて下さると励みになります。
では、また他のシリーズでお会いしましょう
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