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第19話

*** (笹良のために立てた俺の計画、予定通りにいかなすぎるだろ)  笹良と勝負をかけて誓い合った次の日、バスケ部の連中を前にして、イップスにかかっている経緯を、笹良自身の口で説明した。 『イップスが治るまで、皆さんの練習の邪魔にならないように、これから自主練します』  という言葉を聞いたバスケ部のメンツは、誰ひとり文句を言うことなく、拍手で笹良を応援。病気のことを包み隠さず語ったことや、それまで真面目に練習に参加していたのもあり、同じ空間で互いを切磋琢磨すべく、それぞれ練習に励んだ。  その甲斐あってか、1ヶ月計画で俺が考えたイップスの治療のメニューを、わずか2週間でこなしてしまった笹良に、好きという想いがさらに増えてしまったのである。 (あーあ、俺の予想を超える天才ぶりに、周りが気づきはじめちまったじゃねぇか)  自主練していた笹良の動きに目をつけた先輩のひとりが、練習試合に参加してみないかと、誘ったのがきっかけとなり、現在は主力選手に混じって練習するようになった。 「加賀谷、よくぞ笹良のイップスを治してくれたな」  笹良の放つスリーに見惚れていたら、隣で試合を眺めていた先輩に声をかけられた。 「俺の頭脳にかかれば、イップスのひとつやふたつ、簡単に治せちゃいますって」  胸を張って先輩を見下ろしながら言うと、感心した視線を飛ばされた。 「まともなバスケのプレイをしている笹良の姿は、イップスのせいで見られないと思っていたからさ。やっぱすげぇな、スリーポイントシュートの貴公子のシュート」 「なんすか、それ?」 「笹良清貴って名前に、どっかで聞いたことがあるなと思って、ネットで調べてみたんだ。そしたら中学の全国大会で、大量得点をたたきだした選手だったというわけ。その年の大会のМVPに選ばれていたから、名前が載ってた。中学生らしからぬ落ち着いた様子に、巷ではスリーポイントシュートの貴公子と呼ばれていたそうだ」 (マジかよ。俺の目がМVPを見抜いていたとは!) 「このままだと加賀谷は、笹良にポジションを奪われるかもな」 「努力型の俺が天才型の笹良に、最初っから勝てるはずはなかったということです」 (そんな笹良に憧れてると言われただけ、幸せなのかもしれない。付き合えないとしても、アイツが楽しそうに、バスケをプレイする姿が見られるだけで、良しとしなければ)  当然だけど、気持ちの整理はすぐには無理だった。  指導と称して笹良にボディタッチをしたり、ひとりで帰りたがるアイツの隣に無理やり並んで帰ったり。自分なりに友達みたいな関係を構築して、好きだという気持ちをなんとかやり過ごした。

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