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恋のマッチアップ番外編 膠着状態10

 俺の意見を完全に無視して、両腕を使って躰を抱きしめる。痛みを強く感じる抱擁に、顔をうんと歪ませた。 「加賀谷、痛いって。しかも苦しい」 「これが俺の気持ち。理解してほしんだけど」  耳元で囁かれた言葉に、それ以上の苦情を告げることはできない。自分の気持ちを可視化できないのが悔しいと言った加賀谷が、抱きしめてそれを表してくれていることを感じた途端に、恐怖心が自然となくなっていく。 「笹良、大好き」 「ぅ、うん……」 「すっげぇ好き。どうしていいかわからないくらい好き」 「そ、そうなんだ……」  聞いたことのない甘い声で囁かれる愛の言葉の連続に、頭が爆発しそうになる。恐怖心がなくなったのと入れ違いで、胸がドキドキして苦しくなってきた。心臓は所定の位置で高鳴っているというのに、まるで耳元で鳴ってるように感じた。 「笹良の全部がほしい」 「全部なんて言われても……。やれないって」  痛いくらいの動悸を抱えながら、加賀谷と会話を交わしつつ、この窮地をどうやって脱するか。そればかりを考える。 「やれないなんて、冷たいこと言うなよ。こんなに求めてるのに」  加賀谷は頬にくちづけてから、俺の腰に硬くなったモノを押しつけ、ちょっとだけ上下させる。 「やめろって!」 「笹良がほしくてたまらない」  抵抗する間もなく、唇が奪われてしまった。触れる加賀谷の唇から舌が入り込み、俺の舌に絡めようとする。 「ンン、あっ」  唯一動かせることのできる頭を必死になって動かし、加賀谷のキスから逃れようと試みたが、そんなのお構いなしに、激しく舌を出し入れされた。そのせいであらぬ方向に、妄想が進んでしまう。 (この舌が加賀谷のアレで、俺の中に出したり挿れたりなんて……)  妄想が頭の中で映像化された瞬間、出し入れされる加賀谷の舌先を、思わずちゅっと吸ってしまった。 「くっ、しゃしゃら…」 「あ、ああぁ…ちがっ」  慌てて加賀谷の舌を解放したが、一瞬でも求めてしまったのは事実。まじまじと直視する視線に、ぶわっと頬が赤くなっていくのがわかった。 「笹良、可愛い」 「かっ可愛くなんてない!」 「可愛いって。俺のキスに感じて、おまえのチ――」 「言うなよ! これ以上変なこと言わないでくれ! もう嫌だ……」  恥ずかしさのあまりに喚き散らす俺を、加賀谷はしてやったりな顔で見下ろす。

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