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第十一章・10
「……」
「何? 眠いの?」
熱いひとときを終え、秀也に体を拭いてもらった茉理は、じっと兄の姿を目で追っていた。
とろん、とした眼差しで。
「ねぇ」
「ん?」
「どうして、秀也、なの?」
「う~ん」
うまく言えないけど、と秀也は照れながら茉理の隣に横たわった。
「さっき、言ったろ。『僕、兄さん以外の人の弟に、なりたくない』って」
「言ったよ」
「だったら、弟じゃなきゃいいじゃん。弟である前に、恋人だったらいいんじゃないか?」
赤くなった秀也に、茉理は『お兄ちゃん』と言いかけて、やめた。
「秀也。秀也……、秀也!」
「茉理!」
抱きついてきた茉理を、秀也はしっかり受け止めた。
温かいキスを交わし、新たな関係を噛みしめた。
「愛してるよ、茉理」
「僕も愛してる、秀也」
前途は多難。
だが、明るい希望が二人の前に満ちていた。
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