95 / 96

第十一章・10

「……」 「何? 眠いの?」  熱いひとときを終え、秀也に体を拭いてもらった茉理は、じっと兄の姿を目で追っていた。  とろん、とした眼差しで。 「ねぇ」 「ん?」 「どうして、秀也、なの?」 「う~ん」  うまく言えないけど、と秀也は照れながら茉理の隣に横たわった。 「さっき、言ったろ。『僕、兄さん以外の人の弟に、なりたくない』って」 「言ったよ」 「だったら、弟じゃなきゃいいじゃん。弟である前に、恋人だったらいいんじゃないか?」  赤くなった秀也に、茉理は『お兄ちゃん』と言いかけて、やめた。 「秀也。秀也……、秀也!」 「茉理!」  抱きついてきた茉理を、秀也はしっかり受け止めた。  温かいキスを交わし、新たな関係を噛みしめた。 「愛してるよ、茉理」 「僕も愛してる、秀也」  前途は多難。  だが、明るい希望が二人の前に満ちていた。

ともだちにシェアしよう!