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第3話 初めてのお仕事?・5
「こっちもさっさと片付けるぞ。俺の言う通りにしておけばすぐ終わる」
フレンドリーな炎珠さんと違って、刹はどちらかと言えば少しおっかない雰囲気のオーラを持つ男だ。見た目もそうだし、物の言い方も棘があるし。
それに、昨日初めに俺に手を出してきたのも刹だった。
「にゃん太」
鋭くも気だるげな眼付きと薄い唇、ウッドベースのような低い声。スレンダーなのにシャツの裾からチラリと覗く腰や腕は割としっかりしていて、シルエット的には黒ヒョウのようにセクシーで……って、何考えてるんだ俺は。
「聞いてんのか、那由太」
「え? なに……」
「さっさと脚を開いて裾を捲れ」
「………」
やっぱり逆らうのは怖くて、結局俺は刹の言う通りのポーズを取った。
「……うう、何で俺が……」
「いい格好だぜ。なかなかエロい」
次々とシャッターが切られて行く。男だし別に上半身くらい見られたって構わないのに、どうしてこんなに恥ずかしいんだろう。脚を開いていると言っても、ちゃんと下着を穿いている。昨日二人にあれこれされた時の格好よりはずっとましじゃないか。
「顔が赤くなってきたな。昨日のことを思い出したか?」
「っ……」
「あの時もそうやって股開いて、俺にしゃぶられていい顔してたな」
一気に心臓が高鳴り出して、俺は刹から視線を逸らした。
「咥えられんの、初めてだったんだろ。あっけなくイッてたしな」
「……や、やめて下さい、そういうの……」
「その分だとマジでセックスもしたことねえだろ。どんなに良いモンかそのうち俺が教えてやる」
嫌なのに震えてしまうのは、まさに昨日の快感を体が思い出してしまったせいだ。シャツを捲られて下着を下ろされて、刹と炎珠さんに好きなように弄ばれて──
「う、……」
「勃ってきたな」
「や、……やだ、ぁ……」
刹の嬉しそうな薄笑みと、シャッターが切られる音。熱くなった体に、芯を持ち始めた股間の中心部。俺は潤んだ目でカメラのレンズを見つめ、訴えるようにかぶりを振った。
「と、撮らないで……」
「ビジネスだ」
「撮らないで……こんなの、嫌だって……!」
「可愛いぜ、那由太」
「………」
薄笑みじゃなくて、皮肉っぽいものでもなくて、まるで炎珠さんみたいにニコリと……刹が笑った。それが逆に薄気味悪くて、安心するどころか全身に鳥肌が立ってしまう。
滅多に笑わない奴が笑った時っていうのが一番怖いんだ。漫画でも何でもそう決まっている。
「下着をずらして出してみせろ」
「や、やっぱり!」
「何だ、予想出来てたなら話が早え。出せ」
「やだ! 絶対嫌ですっ!」
「一千万」
「うっ、──」
やっぱり俺、選択肢を間違えたんじゃないだろうか。それとも金融屋に追い回されるよりは痴態を写真に撮られる方がましなんだろうか?
考えても答えが出ず、俺は震える手でボクサーパンツのゴムを掴んだ。
──これは仕事。仕事、仕事なんだ。
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