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第4話 飼い主はみんな親バカ・7

 酒のグラスを片手に、今度は刹がリビングへ入ってきた。 「まあ待て、にゃん太」 「にゃん太って言うなぁっ!」 「このサイトはPdMCと繋がっている会員制サイトだ。お前がこのサーバーに存在し続ける限り、寝てても金が入ってくるんだぞ。これもビジネスだろ」  PdMCって、昨日撮った動画でも刹が言っていた気がする。俺達も参加することになったとか、どうとか。 「ど、どういうこと? これがビジネスって……PdMCって何なんですか?」 「PdMCっていうのは……」  炎珠さんがマウスを操作して、サイト内のある個所をクリックした。  俺の画像から真っ黒な画面に切り替わり、三秒ほどで「welcome to PdMC」という白い文字が浮かび上がってきた。続いてメニューバーが出現し、炎珠さんが「クラブご案内」という項目をクリックした。 『PdMCにようこそ。当クラブは皆様の大切な愛玩青年の日々の記録を、画像や動画を通じて同好の皆様と分かち合うことを目的とした会員制クラブです。  会員の方でしたらどなた様でも、画像や動画の投稿・ウェブサイトの作成・オフミーティング等にご参加頂けます。  貴方様と愛玩青年との素敵な生活が、当クラブでより極上のひと時となりますように。』 「……変態の集まり?」  訊けば炎珠さんがゲラゲラと大爆笑をして俺の背中を叩いた。 「確かにそうだけど、セレブ層には変態が多いんだって。形がある物はある程度手に入るから、そのうちお金をこういう方面に使うようになるんだろうね」  セレブの会員制クラブPdMC。  自分好みの愛玩青年を傍におき、ペットと呼んでただ愛でるだけのクラブ。  全国各地で「飼われている」青年が、俺以外にもいるなんて。ていうか、日本人の大半が知らないネットの裏側でこんな非人道的な行為が行なわれているなんて。 「………」  押し黙る俺の頭を撫でて、炎珠さんが笑った。 「お互いの合意があればそんなに悪いモンじゃないよ。『人間をペットに』って聞くと、確かに性奴隷とか人権無視みたいなイメージがあるけど……PdMCでの『ペット』は、本当にその子の一生のお世話をするつもりで迎えて、愛してあげるって意味があるんだ」  グラスを呷りながら、刹がそれに続く。 「だから途中で捨てたり、飽きたからと他のペットを迎えたりするのは絶対的に禁止されている。乱暴も強姦も当然禁止だ。粗悪な飼い主からペットを救うための専門組織もあるし、ペット同士で交流ができるコミュニティもある」  その言葉が本当なら、確かに合意さえあればそこまで悪い話じゃないのかもしれない。  世の中のセレブが何を考えているのか俺には理解できないことばかりだけれど、言われてみれば炎珠さんも刹もこの二日間、俺に手荒な真似をしたり暴言を吐いたり、恥ずかしいことはしたけれど辛くなるようなことはしなかった。  食事もお風呂も寝る部屋も、全部俺のために用意してあるし。  ……もしかして俺、自分が思っている以上に大事にされているのだろうか。

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