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第8話 炎珠ご主人の謎の性癖・7
*
「おう、予想より早かったな」
炎珠さんと二人でリビングへ戻ると、刹がニヤつきながら俺達を見て缶ビールを呷った。
ちなみに俺の服はいつものトラ柄Tシャツと黒のハーフパンツ。例のワンピースは大事にハンガーにかけて、炎珠さんのクローゼットに入れてもらった。またいつでも炎珠さんの希望で着られるように。
「刹が嫉妬しちゃうから、最速で終わらせたんだよ」
「妬く暇もねえよ、早漏」
「酷いっ!」
ぷりぷりと怒る炎珠さんに思わず笑ってしまう。刹の遠慮のなさも、子供の頃からの二人の絆が感じられて俺まで嬉しくなった。
「でも良かったんじゃねえの、にゃん太がお前の趣味を理解してくれて」
「へへ。俺、自分で変わってるって自覚はあったからなるべく自重しようとは思ってたんだけど……。やっぱり那由太が大好きで、可愛いので囲みたくなっちゃって」
「いいんですよ炎珠さん。これからも遠慮なく俺のことガンガン盛って下さい!」
ありがとう、と炎珠さんが俺の額にキスをくれた。
理解し合うと絆も生まれる。炎珠さんと刹の間にある歴史には俺はまだまだ敵わないけれど、きっとこれから俺も含めた三人の絆と歴史が組み上げられて行く。
「それじゃあ、早速なんだけど……さっきの裸エプロン、もう一回着けてもらってもいいかな?」
「えっ」
「だってゆっくり見られなかったし。そうだ、刹に写真撮ってもらおうよ!」
「そ、そ……『そうだ』じゃないですっ!」
テーブルの上に畳んであったエプロンを取って、刹が俺に迫ってくる。
「ほれ、遠慮なく行っていいって言ったのはお前だろ。これ着けてPdMC用の写真撮って、ピザのデリバリー頼んで、お前に対応してもらおう」
「そ、それは趣味の理解とかじゃなくて、単なる羞恥プレイです! ていうか俺よりもデリバリーの人に迷惑がかかるじゃないですかっ」
「うーん。それじゃあ毎回食事の準備する時だけ裸エプロンっていうのはどう?」
「それなら朝はアニマル系ボンテージで、寝る時は全裸だな」
「時間ごとに着替えるのって大変そうだけど良いね。愛情込めて毎日服選ぶの楽しそう!」
刹はともかく、炎珠さんに悪気がないのは分かっている。
だけど流石にそのまま話を進めてもらいたくなくて、俺は二人の間に割って入ってエプロンを奪った。
「そんな一日に何度もコスプレできませんってば! これも俺の仕事だとしても、少しは──」
可笑しそうに笑う二人を見ていれば、俺だってそれ以上何も言えなくなる。
「……まあ、たまになら良いですけど」
二人に聞こえないくらいの小さな声で付け足してから、俺は丸めたエプロンで赤くなった顔を隠した。
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