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第11話 夏祭りは危険がいっぱい?
「見て見て! 那由太の甚平作ったよ!」
「あっ、……カッコいい!」
その日の夜、夕食の後で寛いでいたら炎珠さんが手作りの白い甚平を見せてくれた。
白地に薄いグレーのストライプ柄で、背中には浮世絵風のいかつい猫の絵が入っている。炎珠さんが作るものといえばふりふりで可愛いものばかりだと思っていたから、今回はちょっと感動してしまった。
「明日の夏祭りで那由太はコレ着ようね。俺達は市販の甚平だけど」
「ありがとうございます、炎珠さん!」
「夏祭りか……」
喜ぶ俺と炎珠さんの横で、刹が腕組みをして怖い顔になっている。
「夏の夜の外出だけでも危険は多いが……祭りでテンションの上がった奴らが多い中、甚平姿の那由太を放つのは少し気を張らねばならねえな……」
「そ、そんなことないと思うけど……二人が一緒にいてくれるなら危険も別にないだろうし……」
いや、と炎珠さんが自分の作った甚平に視線を落として首を振った。
「刹の言う通りだよ。俺、そんなことすっかり忘れてコレ作っちゃったけど……こんな卑猥な那由太の姿を大勢の目に触れさせたらどうなるかなんて、火を見るよりも明らかなのに」
俺は二人の間で口をパクパクさせながら、色々と言いたいことをグッと堪えて刹に言った。
「大丈夫だって。俺、炎珠さんと刹から絶対離れないから。何なら手繋いでてもいいし、そんな不安ならリード付けてもらっても構わないし……」
「でもな。もし一瞬でも迷子になったら、もう二度と会えねえと思うと」
「万が一迷子になったとしても、そんなことにはならないってば」
二人の心配性っぷりは理解していたつもりだけど、せっかくだから炎珠さんの甚平を着て、三人で夏祭りに行きたい。
「……そうだ。刹、松永さんに『アレ』 を頼んだらどうかな?」
──アレ?
炎珠さんが手を叩き、同時に顔を輝かせて刹に耳打ちをした。
「それならもしも……レイプされ……だし、……の、役にも……ね?」
「い、今さりげなく『レイプ』って言いませんでしたっ?」
刹がなるほどと片手を顎にあて、炎珠さんの謎の提案に大きく頷く。
ただ夏祭りに行くだけの話なのに、一体俺は何をされるんだろう。
「よし、にゃん太付いて来い。急ぎだから今から出掛けるぞ」
「え、ど、どこに?」
「来れば分かる」
刹の後に続く俺の背中に、炎珠さんが「行ってらっしゃい!」と朗らかな声をかけた。
PdMCのペットって、本当に色々大変なんだな……。
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