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第14話 ご主人との大切な思い出・6
「……もう、どうしてこういう展開になったかなぁ……」
「あはは。那由太もスッキリできたし、未知の領域に達することもできたし、結果良かったじゃん」
……確かに俺も途中から夢中になってしまったし、結局二人と一回ずつセックスしてしまったから、あんまり人のことは言えないけれど。
「途中からお医者さん関係なくなってたじゃないですか」
「そうだよね。那由太は途中まで頑張って『先生』って呼んでくれてたけど……ついついヒートしちゃって、まあいいやって……俺達、なりきりプレイは向いてないのかもね」
炎珠さんと顔を合わせている俺達を見て、上半身裸のままでコーラを飲んでいた刹が呟いた。
「そもそもそういうのって、普通のセックスに慣れ切った奴らが遊びでヤるモンなんじゃねえの。那由太はだいぶ熟してきたとはいえ、まだセックスの回数自体は少ねえ方だし」
「なるほど、幸次郎達は昔からお互いがパートナーだったから、固定相手のセックスに関しては俺達よりも上をいってるってことかぁ……。俺達と那由太なんて、まだまだヒヨッコだね」
「………」
だけど海で涼真さんは言っていた。
――俺はあいつが好きなのに、俺を抱くのはあいつじゃないという気がして。
これは俺の勝手な考えだけど、きっと幸次郎さんはセックスのマンネリ化を防ぐのに必死なのだろう。その理由は涼真さんを満足させたいから、涼真さんが好きだから。
だけど一方で、涼真さんは普通のセックスがしたいと思っている。たまの遊びなら良いけれど、ちゃんと「パートナー自身」に抱いてもらいたい。その理由もまた、幸次郎さんが好きだから。
お互いがお互いを好きで想っているけれど、セックスに関してはほんのちょっとだけズレが生じている――それって多分、話し合えば簡単に解決することだ。
「お医者さんもだし、先生と生徒とか、普通のご主人とネコちゃんとか、やりたいプレイはいっぱいあるのに……マンネリ化するまではお預けってことかぁ」
「それより、向こうも終わったんじゃねえの。飯食いに行こうぜ」
「そうだね、動いたらお腹空いたよ。那由太もじゃない?」
「お腹はペコペコしてます!」
寝室からリビングへ移動すると、俺達より一足早く事が終わって待機していたらしい幸次郎さんと涼真さんが、ソファに座った状態で真っ赤になっていた。
「あ、えっと……」
「幸次郎」
汗を飛ばしながら幸次郎さんが何かを言いかけたのを見て、慌てて涼真さんが肘で脇腹をつつく。それきり黙ってしまった二人は、きっと、恐らく……
「あはは。俺達の声、聞こえちゃってたかもしれない。気を遣わせてごめんね?」
頭をかいて笑い飛ばす炎珠さん。マイペースにコーラを飲み続ける刹。赤面したまま黙り込む二人に、同じく消えてしまいたいほど恥ずかしい思いをしている俺。
「それじゃ、ご飯食べに行こう! 食べ放題のバイキングだから、がっつり元を取りに行くよ!」
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