100 / 114
第15話 ようこそ、PdMCへ!
……まだかな。
「刹、着替えた?」
「ああ、すげえ窮屈……」
……はやく。
「あはは、似合ってるよ。カッコいいじゃん!」
「るっせえ。さっさと行ってさっさと帰るぞ」
「よし、それじゃ行こうか、那由太!」
……やった!
タクシーを呼んで、行き先を告げて、いざ――PdMC懇親会の会場へ!
「炎珠さんも刹も、スーツめちゃくちゃ似合ってます!」
「那由太もね。本当は俺の手作りキャットスーツを着せたかったけど、『露出度の多い衣装はNG』だっていうから残念」
キャットスーツは着なくて済んで良かったけれど、どうせなら俺もご主人みたいなカッコいいスーツを着たかったと思う。大勢が集まるパーティーだから「ご主人」と「ペット」を分かりやすく見分けられるように、ご主人はスーツ、ペットは自由な服装となっている。結局俺はお気に入りのヒョウ柄パーカをメインとしたカジュアルな恰好だ。――ただし、首には二人がくれた鈴付きの首輪が付いている。
炎珠さんは白いスーツ、刹は黒いスーツ。二人ともホスト顔負けの男前ぶりだ。早く会場に行って、ペット仲間に自慢したい。
「クラブを貸し切ってのパーティーなんて凄いよね。俺達も初参加だからわくわくするよ」
「エアコン効いてるだろうな。スーツで歩き回るなんて暑くて仕方ねえぞ」
「流石に効いてるでしょ」
年に一度の懇親会。俺達が参加するのは「PdMCイースト」という、関東メンバーのパーティーだ。同時刻に関西の方でも「PdMCウェスト」の懇親会が行われる予定で、双方かなり大規模なパーティーになるのだという。
華深と涼真さんも来ると言っていたし、タトゥースタジオのナガさんもペットの子を連れて来るらしい。他にもまだ会ったことのない仲間達、ご主人達。
こんなにわくわくしているなんて、炎珠さんと刹に出会った頃の俺からは考えられない心の変化だ。
「あ、見えてきたよ会場!」
主催メンバーの持ち物だという三階建てのクラブ。普段は町中の若者が集まって踊ったり飲んだりをする場所だが、今日一日はPdMCによるPdMCのためのパーティー会場。
「行こう那由太!」
「はいっ!」
運転手さんに代金を払い、炎珠さんと刹の間を歩きながら入口を目指す。俺の胸は緊張と興奮で今にも破裂しそうなほど高鳴っていた。
「藤ヶ崎様、高柳様ですね。お待ちしておりました」
「よろしくお願いします。この子が那由太です」
受付の若いイケメンがタブレットを操作し、俺の情報を確認している。
「ネコさんで登録ですね」
「はいそうです。ネコの那由太です」
「はい、確認できました。那由太さんはこちらのリストバンドをどうぞ」
もらった白いリストバンドを腕に巻くと、受付の人がバーコードリーダーのような機械でバンドについた番号を「ピッ」とした。
「会場の出入りは自由ですが、このバンドを失くされますと再入場できなくなりますのでご注意下さい」
「わ、分かりました!」
何だか遊園地に入る時みたいだ。
ともだちにシェアしよう!