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第55話

*** 体が痛い。寝返りをうとうとして体に走った痛みに涙が浮かぶ。 隣に凪さんはいない。どこにいるんだろう。 声を出そうとして、それと同時に部屋のドアが開いて凪さんが顔を覗かせた。 「あ、真樹、おはよう。体はどう?」 「……凪さん」 声が少し枯れている。喉も若干痛い。 傍に来た彼は苦笑しながら俺の頬を撫でる。 「ごめんね、初めてだったのに無理させて。水持ってくるから待ってて」 「ありがとう、ございます」 部屋を出て直ぐに水を持って戻ってきた彼。 彼の手を借りて体を起こし、水を飲むと喉が潤った。 「あの……昨日寝ちゃって、ごめんなさい……。」 「俺が無理させたんだ。大丈夫」 「……すごく、気持ちよかった、です……。」 「うん。俺も」 急に凪さんに抱きしめてほしくなって、彼の服の袖を掴む。 「凪さん、抱きしめてほしい……です。」 「可愛いなぁ、本当。」 ギュッと抱きしめられ、大好きな匂いを嗅いだ。 背中に回る手がゆっくり撫でたかと思うと、腰を摩ってくれた。 「痛む?」 「ちょっと」 「今日はここで寝て過ごそうね」 「うん」 チラッと時計を見ると午前十時。 トイレに行こうと彼の手を借りて立ち上がった時に気が付いた。体がさっぱりしている。 昨日あれだけしたのにどうしてだ。……答えは一つしかない。凪さんがしてくれたんだ。 「凪さん、お風呂入れてくれた?」 「いや、体は拭いただけだよ。気持ち悪いと思うしお湯はもう少ししたら沸くから、それで起きてもらおうとして呼びに来たんだ。ちょうど真樹が起きててよかった。」 「そうなんだ……。ありがとうございます」 産まれたての子鹿みたいに足がプルプルしている。 トイレまで連れて行ってもらって、その間に凪さんが着替えを取りに行き、トイレから出るとまたお風呂場まで連れて行ってくれた。 「本当、ごめんね。無理させて……」 「大丈夫です。足プルプルしてるのも面白いし。ただちょっと、お手を煩わせてしまいますが……」 「俺のせいなんだから気にしないで。お風呂は一人で入れそう?もし無理なら……」 「大丈夫です!」 きっと一緒に入ろうとするだろうと思って食い気味に伝える。 お風呂場に入り大きなガラスの前に立つ。 「……すっご」 アルファのオメガに対する独占欲は強いって聞くけど、これは凄い。 体の至る所にキスマークがあって、ついそれをそっと撫でる。 服を着ていれば隠れる所ばかり。考えて付けてくれたのか。やっぱり彼は優しい人だ。 髪と体を洗い、湯船に浸かる。 深く息を吐いて脱力する。 ああ、癒される。

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