82 / 195

第82話

車に揺られていると、急に下腹部が重たくなった。 「ぅ……」 「大丈夫?気持ち悪い?」 「……おしっこ行きたい……」 お酒と水を飲んでトイレに行っていなかった。 少しの振動が辛くて俯き背中を丸める。 「もう着くからね」 「うぅ……だめ、漏れる……凪さんはやく……」 歯を食いしばって堪えて、漸くマンションに着いた頃には歩くのすら億劫だった。 走ることはできなくて、ヨタヨタと歩きやっと部屋の玄関に辿り着いてほっとする。 途端、ジワジワと下半身に生暖かい感覚が広がった。 「え、ぇ……うそ、やだ、やだっ!」 「……」 下腹部の重みが無くなっていくのと同時、体の体温が一気に奪われて床に座り込む。 「ひっ、ひ……っごめん、なさい……っ!」 「……真樹、お漏らししちゃったの?」 「ごめ、なさい、ごめんなさいっ!」 恥ずかしい。恥ずかしすぎて消えてしまいたい。 涙が溢れて頬を濡らす。咄嗟に股間を押えた手は濡れ、ぴちゃぴちゃと水音がする。 「大丈夫だよ。先に全部脱ごうね」 「うぅぅ……」 「まーき、ほら、脱いで。タオル持ってくるから足拭いてそのまま風呂に入っておいで。大丈夫、大丈夫。」 「ごめんなさいぃ……我慢、出来なかったぁ……!」 悲しくて動けないでいると、ベルトを取られジッパーも下ろされて下着と一緒に服を脱がされた。 タオルを取りに行った彼は俺を立たせると軽く足を拭いてお風呂場に連れて行ってくれる。 「ゆっくり入っておいで」 「な、凪さん、凪さん……ごめんなさい……」 「怒ってないよ。謝らなくていい。」 「じ、自分で片付けるから、すぐ出るから……」 「あ、でも酔ってるから一人で入るのは危ないかもしれないね。ちょっと待っててくれる?すぐ戻ってくるから」 そう言って颯爽と消えた彼。 俺は情けなさに涙が止められなくて、言われた通りに待っていることしかできない。 しばらくすると戻ってきた彼は、まだ俺が着ていたシャツを脱がせて全裸になると、自分の服も脱いでお風呂に入ってきた。 「もう泣かなくていいよ。ビックリしたね」 「っ、こ、子供扱い、やめて……っ」 「あ、ごめん。」 漏らしてしまった今、子供扱いをされると悲しさを通り越して絶望感すら生まれる。 「とりあえず体洗おう。ほら、泣き止んで。」 「……」 鼻水まで出てきて、情けない姿を凪さんに晒してしまう。それでも凪さんは笑って俺の世話を焼いてくれた。

ともだちにシェアしよう!